アサギマダラの ♡ ハートマーク ♡

アサギマダラの斑紋をまじまじと見たことがありますか?どこにマーキングしようかな〜などと、鱗粉の少ないところを探すことはあっても、白い斑紋にはあまり目を留めないかも知れませんね。

でも、個体を識別する時には、斑紋で区別するようなことがあるでしょう。黒や茶色の地の中に点々と描かれた白い斑紋を見ますよね。

個体によって斑紋が微妙に違い、それぞれの個性でもあるかのように見えてしまいます。私が時々注意して見ているのが、このハートマーク「♡」なんです。

上の画像は後翅の一部ですが、白い ♡ ハートマークが分かりますか?

翅の全体はこんな感じです。

別の個体ですが、矢印の方向に ♡ ハートマークが分かりますね。

さらに別の個体ですが、この個体にも ♡ ハートマークがありました。

さらにさらに、松本生まれでもあるかのような新しい個体の♡マークがあったので、追加します。

でも、すべてのアサギマダラにハートマークがあるわけではないんです。ハートの位置に斑紋がなかったり、内側の斑紋にとけ込んでしまったり、形がいびつな個体も多く目に付きます。

きれいな ♡ は、実は少ないんです。

マーキングしながら、またある時には撮影をしながら、ぜひハートマークを探してみてください。

ハートマーク ♡ は、美味しい蜜をたっぷり吸っているアサギマダラからの、ほんのちょっぴりの感謝の気持かも知れませんね。

イケマを好むジュウジナガカメムシ:長野県

先日、アサギマダラの会のまとめ会で講演会があり、講師の先生がキジョランやイケマなどを好む虫の名前をいくつか出されたんですね。

アサギマダラの幼虫が好む植物の中で長野県で見るのはイケマが多いですが、実はそのイケマを好むのはアサギマダラの幼虫だけではなく、ジュウジナガカメムシもイケマが大好物だということを知りました。

長野県松本市美ヶ原林道 標高:1,300m付近 2022年6月8日撮影

ヒメジュウジナガカメムシやジュウジナガカメムシに新芽が加害されると、その植物が枯死することもあるとのことでした。それで、まとめ会の後、メモを見ながら、気になって過去のデータを探してみました。

現地のイケマを撮影した画像を確認したところ、講師の先生が見せてくださった、赤いカメムシに似たカメムシがいくつか出てきました。

その画像のカメムシが該当のカメムシなのかはまったく分からなかったのですが、アサギMLにアップしてお聞きしてみました。

上の画像がそれです。早速何人もの皆さんが反応し、先生方が画像を確認してくださり、ジュウジナガカメムシだとのことでした。

イケマでアサギマダラの卵を確認していた時、たまたまイケマの葉っぱにカメムシがいたので撮影しただけだったのですが、このカメムシもイケマが大好物だったと知ることになりました。

よく似たカメムシでヒメジュウジナガカメムシは、どうやら長野県よりも暖かいところにいるようです。暖かい地方の皆さんは、ガガイモやキジョランなどで確認できるかも知れませんね。

赤い色とシャレた模様がとってもきれいですが、このカメムシたちが集団でアサギマダラの食草を吸汁し尽くしてしまえば、アサギマダラが産卵する食草はあっという間になくなってしまいそうです。

上の個体は6月8日の撮影で、交尾でした。9月3日にはイケマにいた集団の個体を撮影しており、それは幼虫だったようです。

皆さんのところでも、アサギマダラの食草に、このようなカメムシやアブラムシなどがいるでしょうか?

もしいましたら、画像とともに、撮影年月日、場所(座標もわかれば)、撮影者の実名を添えて、このブロクか、Facebookアサギマダラ・マーカーの広場にぜひ情報を提供してください。

上の個体の簡単な確認情報です。このような感じで構いません。

イケマを食べるカメムシ情報】
確認地:長野県松本市美ヶ原林道
座標:36.25089, 138.03311付近
標高:1,300m付近
確認日:2022年6月8日
撮影者:田原富美子

MLで情報を共有させていただき、専門家の先生方にお聞きしてみますね。

カメムシだけがアサギマダラが増えたり減ったりする大きな要因とはならないかも知れませんが、何らかの手がかりの一つになったらいいですね。よろしくお願いいたします。

本の紹介「モンシロチョウは史前帰化昆虫か? アサギマダラの生活 :長谷川順一著」

冬になると、フィールドに出かける機会がめっきりと減ってしまいますね。そんな時期ですので、アサギマダラに関係した本を紹介します。

タイトルは「モンシロチョウは史前帰化昆虫か? アサギマダラの生活 」。蝶やアサギマダラの研究者の一人、栃木県の長谷川順一さんの著作で、内容は、モンシロチョウとアサギマダラの二本立てとなっています。この時期に読んでみられませんか?

子供の頃から自然の中で遊び、昆虫や花に親しみ、大学では植物を専攻したものの、後に生物全般に関心が広がった長谷川さんが、モンシロチョウは1975年から、アサギマダラは2004年から調査、研究をしています。

モンシロチョウは誰でも知っていてどこにでもいる普通のチョウですね。キャベツの害虫と思っている方が多いと思うのですが、何を食べているのか、実際に何が大好物なのでしょうか?ではその植物はどこにあるのでしょうか?

モンシロチョウが特に好む植物は日本の土着植物か帰化植物かという観点から、食草、移動等を検討しています。

モンシロチョウの蛹や抜け殻さえ見たことがない私は、カラー写真からその多様性に驚かされました。

さて「アサギマダラの生活」は、皆さんにとって一番の関心事ではないでしょうか?

長谷川さんの住む北関東での夏のマーキングと、その成果はグラフや地図などで見ることができます。8月にマーキングした個体が9月、10月、11月と、どのように移動していったのでしょうか?

どのくらいマーキングしてどれほどの再捕獲があったのでしょうか?気になる再捕獲率はどのくらいなのでしょうか?

アサギマダラと言えば、渡りの観点から再捕獲に目を留める皆さんが多いと思いますが、アサギマダラの産卵時期とか、羽化の時期ってどうなっているのか気になりませんか?

長谷川さんご自身が現地に何度も出向いて調査されています。では調査方法はどのようなものなのでしょうか?

記述を通して、私は「長谷川さん、根性がある〜!」と思いました。私個人は、同じことを野外でやっても、たくさんのデータを取るほどには至っていません。信州人がよく口にする「ずくがない」からです。長谷川さんを含め、研究者たちはそのずくの塊です。そして関心も持ったら、それを継続する。その根性の持ち主だからこそ、たくさんのデータが取れて、思わぬ発見もあるんですね。

キジョランがない(と思われる)長野県では秋はもっぱらマーキングですが、栃木県には常緑のキジョランがあり、秋にも産卵を確認できるようです。越冬も確認できているようですので、関東方面の皆さんはこの時期ですら観察する機会がありそうですね。

気象や天敵にも影響を受けるアサギマダラですが、カラー写真からもたくさんのことが学べます。

「今は本が安くできる。パソコンで編集し、表紙まで編集した」と言う長谷川さんです。発行も長谷川さんご自身です。

縦256、横183mm、110ページ、税込み1320円。六本脚、南陽堂書店などで扱っています。

2022年度のまとめ&2023年度計画立案会(通称「まとめ会」)プログラム

アサギマダラの会の「まとめ会」のプログラムなどを紹介します。

日時: 2023 年 2 月 18 日(土) 13:00~17:10
様式: ZoomMeeting によるオンライン開催
参加者: 本会会員および会員外でアサギマダラに関心のある者
(ともに事前の参加申し込みメールが必要)

内容:
13:00 開会・諸連絡・ Zoom 使用上の案内など

13:05 会長挨拶

13:10 【ミニ・シンポジウム】80 分
 『アサギマダラ個体数の変動要因は何か』–なぜ 2022 年は少なかったのか–
 【基調講演】本田計一氏(西条生態学研究所・広島大学名誉教授)
 ディスカッション

14:30 【研究発表①】渡辺康之氏 25 分
 『2022 年、兵庫県宝塚市・尼崎市武庫川沿岸地域におけるアサギマダラのマーキング調査について』

14:55 休憩 15 分

15:10 【研究発表②】山上初音氏(大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻)25 分
 『アサギマダラの定位方角を調べる実験系の構築』

15:35 【研究発表③】金澤至氏・﨑山孝也氏 25 分
 『和歌山県のアサギマダラなどの新知見』

16:00 【研究発表④】増澤敏弘氏 25 分
 『のっぺ山荘でのマーキング調査から』

16:25 【研究発表⑤】藤野適宏氏 15 分
 『ジョロウグモはなぜアサギマダラを食べないのか』

16:40 総会(30 分)

17:10 閉会

2022年度のまとめ&2023年度の計画立案会(通称「まとめ会」)のご案内

2023年2 月1日 アサギマダラの会事務局・村上豊

恒例の「まとめ会」開催が決まりました。昨年と同様に、今回もZoomMeetingを利用しておこないますので、遠方の方にも気軽にご参加頂けます。多くの方のご参加をお待ちしています。

開催日程:2023 年 2 月 18 日(土)13:00~17:10
開催方法:Zoom を用いた ON-LINE での開催
参加対象者:アサギマダラの会会員およびアサギマダラ調査に関心をもつ方(非会員可
参加方法:事前に参加申し込みをメールにて発信
      ↓
     事務局より視聴 URL を受信
      ↓
     開催当日に視聴 URL に繋ぐ
開催内容
ミニ・シンポジウム「アサギマダラ個体数の変動要因は何か」
 基調講演・本田計一氏(西条生態学研究所・広島大学名誉教授)
 参加者全員によるディスカッション
研究発表5題
総会

2022 年は各地でアサギマダラが少なかったと言われています。多かった2021年とは何が違っていたのでしょうか。アサギマダラの出現数を決める要因を探ります。基調講演を広島大名誉教授の本田計一氏にお願いしました。

参加の申し込みは、視聴を希望する PC(あるいはスマホ)から、以下のアドレス宛メールにて、本文に必ず「お名前」を記入の上送付してください。また件名は【まとめ会参加希望】としてください。2月 11 日(土)までにお願いします。

jym-0644【アットマーク】zeus.eonet.ne.jp (アサギマダラの会事務局)(【アットマーク】を @ と入力してください)

オスの占有飛翔

昨年(2022年)の10月頃にアサギマダラのメスの占有飛翔らしきものを観察した記事を書きました。この小文では、よく見られるオスの占有飛翔について簡単に紹介します。

私が初めて占有飛翔を見たのは、今から約40年前の10月頃のことでした。大阪府箕面市の瀧安寺の林の中の空間を1頭のオスがクルクルと飛んでいました。多分、晴れた午後早くの時間帯だったと思います。

そこは広葉樹林の中でぽっかりと開けたところで、中央に枯れた高木が1本立っていました。そのアサギマダラは急速な円形飛翔や、8字飛翔をしては、時々中央の枯れ枝で休憩していました。その飛翔の懸命な様子がとても印象に残りました。メスを待ち受けていたのでしょう。

この現象から、移動最盛期にオスは先回りして、林の中の開けた空間で占有飛翔を行い、通過するメスを待って配偶行動を行う、と考えました。そのような日だまり空間では、アサギマダラの食草であるキジョランなどのガガイモ類が芽を出し、メスが飛来しやすいのでしょう。

それからしばらく経ち、観察経験が増えるに従い、占有飛翔らしき飛び方を何回も見ることがありました。箕面市の瀧安寺で観察した典型的な占有飛翔は少なく、アサギマダラのメスが多い、金剛山の林道上空や、滋賀県のびわ湖バレイでは完全に林内で占有飛翔が見られることもありました。たいてい午後でした。

昔、アサギマダラの交尾行動の観察例をまとめたことがありました。交尾行動の時期は季節に関係なく、アサギマダラが活動する期間全般にわたっていました。アサギマダラは休眠性がありませんので、羽化して2週間ほどで成熟すると、一年中配偶行動をするのでしょう。

午前中に吸蜜した後、午後にオスが占有飛翔して、そこにメスがやってきて交尾にいたるのだと思います。それでも交尾できないメスが非常にまれに占有飛翔?を行うのかもしれません。

皆さんはどう思われますか?

明けましておめでとうございます!

遅ればせながら、新年のお慶びを申しあげます。本年もこのブログ、アサギマダラの会をよろしくお願いいたします。

私事ですが、和歌山県に設置した調査所を年末に転居する必要に迫られ、ようやく近くの新居への移転が終了して、機能するようになりました。

コロナ禍の中でしたが、和歌山県での調査所生活も3年が経ち、アサギマダラを愛好する地元の多くの方々と知り合うことができました。和歌山県ではフジバカマ園が続々と開園し、とても盛り上がっています。皆さん、とても熱心で、大阪に比べて地の利もあり、今後の発展がとても楽しみです。

ウサギ年の今年は飛躍の年になるでしょう。みんなでアサギマダラ調査を楽しみましょう。

12月1日現在の「アサギマダラの再捕獲:2022」

台湾からの移動と台湾への移動を含む、今年の全国でのアサギマダラの再捕獲をマッチングしてみました。

 

グラフの下にも書いておきましたが、2022年12月1日24時現在です。

大阪市立自然史博物館のアサギML(メーリングリスト)に寄せられたデータの集計ですが、手作業でやっていますので、集計ミスもあると思います。

2022年に標識された個体が対象で、再々捕獲は2例、再々再捕獲は3例扱いしており、合計924個体による936例です。

記録中や、標識者不明個体なども含めています。

暖かい地方では、まだまだアサギマダラを見ると思います。翅にマークが付いたアサギマダラに出会いましたら、可能でしたら捕獲し、写真を撮り、ぜひご報告ください。

皆さんのご協力をよろしくお願いいたします。

最近のアサギマダラ関連のWebニュース 10月-11月

最近のアサギマダラ関係のWebニュースです。
皆さんの活躍は励みになりますね。
【アサギマダラ、1734キロの旅 山形の遣水さん放し、蔵王から沖縄へ】2022年11月27日
Yahoo!ニュース
【アサギマダラの長旅見守る 龍郷小 マーキング活動で生態学ぶ】2022年11月18日
南海日日新聞社
Yahoo!ニュース
【旅するチョウの飛来地見学 香港から上富田と串本へ】2022年11月16日
AGARA 紀伊民報
【アサギマダラ1400キロの旅 山形発、和歌山経由で鹿児島へ】2022年11月10日
AGARA 紀伊民報
【「お接待の心」で、旅する蝶・アサギマダラを迎える人たち 瀬戸芸開催中の香川に飛来】2022年10月29日
Yahoo!ニュース
【喜界島・奄美大島でマーキング】2022年10月24日
奄美新聞社
【アサギマダラ飛来確認 石川県から、今シーズン初 チョウ研究の福島さんが捕獲 喜界島】2022年10月20日
南海日日新聞社

【「WK TM」の標識者を探しています。徳島県・鹿児島県などで幾つも再捕獲】

迷子のアサギマダラのご案内です。

昨年から「WK TM」と思われるマークのアサギマダラが、徳島県や鹿児島県で幾つも再捕獲されています。

標識者がわからないためにただ迷子になっています。ご存じの方はいらっしゃいませんか?

上の画像は、20211030、徳島県海部郡美波町阿部で再捕獲されたアサギマダラです。([asagi:02697]【再捕獲情報】より)

「WK TM」の特徴ですが、「WK」は横書き、でも「TM」は、まるで作った記号でもあるかのように、TとMは上下の表記となっています。何箇所かで再捕獲された画像から、恐らくTMだろうと判断しています。

「TM」の右横には「-〇〇〇」と、個体の通し番号が記されています。今年11月に鹿児島県喜界島で再捕獲された個体には「-930」と書かれており、([asagi:05928]【再捕獲情報_73】)、昨年、徳島県で再捕獲された個体には、上の画像のように「-492」と、500に近い番号があります。

画像から、この個体は、上から「10/24 WK T M -492」と書いてあると思われます。

通常、何百頭ものアサギマダラに標識する人は、大阪市立自然史博物館のアサギMLに登録してマーキングします。登録しないと、どこかで再捕獲されても、情報が何も入ってこなく、やっていることが無意味になってしまうからです。

でも、このマークの方は、アサギMLには登録していない方だろうと思われます。再捕獲情報が出ても、昨年も今年も、何の反応もないからです。

ご存じの方はアサギマダラの会のこのブログのコメントでも結構ですし、Facebook アサギマダラ・マーカーの広場でも結構ですので、情報を入れていただけますか。

よろしくお願いいたします。