朝ドラ「らんまん」と大河ドラマにアサギマダラが登場

以前、NHKの連続ドラマ(通称「朝ドラ」)のオープニングにアサギマダラが登場したことを紹介しました。

すでにご存知の方が多いと思いますが、今放送中の朝ドラ「らんまん」のオープニング映像に毎回アサギマダラが登場していますね。アサギマダラが登場するのは、オープニング映像が開始されて約12秒後から約1秒間です。コバノフジバカマと思われる植物の花に主人公の槙野万太郎が座っていて、その近くをオスらしいアサギマダラが飛びまわります。実際の飛翔映像を撮影して、主人公の映像を合成したのでしょうね。ご覧になったことがない方は、ぜひご確認ください。

ところで、モデルの牧野富太郎は、北隆館の有名な牧野植物図鑑の著者ですね。私が最初に買った植物図鑑が牧野図鑑でした。高知県や太平洋岸の植物が中心に掲載されているので、日本海側の植物を調べると、あまり載っていないことが多かった記憶があります。しかし、植物の図は出色のできでした。東大で苦労しながら、植物学を前進させている今回のドラマの内容は、アサギマダラを愛好している私たちも共感できるものと思います。今後、ドラマの中でフジバカマ類が取り上げられることを祈りたいと思います。

実は、今放送中の大河ドラマ「どうする家康」(3月12日放送回)にアサギマダラが登場したのです。これも報告しなければ、と考えていましたが、録画を消してしまい、正確な記述ができなくなっています。記憶から呼びおこすと、そのシーンはオープニング映像の後の数秒間だったと思います。家康の正室の築山殿が暮らす築山の屋敷の庭を1頭のアサギマダラが飛びました。

ところが、6月18日の放送でも、やはり築山の屋敷の庭のナデシコのような花ばなの上で、アサギマダラが1頭フワフワと飛ぶシーンが出てきました。番組開始約30分後あたりで、登場シーンは約10秒ほどでしょうか。けっこう長いですね。サクラ?の花びらが散っていましたから、4月頃でしょうか。散っているのがモモの花びらであれば、もっと後の季節でしょう。

ナデシコ類にアサギマダラが訪花することは聞いたことがありません。しかし、ウィキペディアによると、築山は「岡崎城の北東約1キロほどに位置する、岡崎市久右衛門町であったとされる」とのことです。有名なアサギマダラの集結地である西尾市東幡豆町の三ヶ根山に近い場所ですから、アサギマダラが通過しても不思議はありません。

この後、ストーリーとしては、築山殿の殺害と息子・信康の切腹があるはずです。原因とされるのは、武田勝頼との内通のようです。武田の本拠の甲府は、岡崎の築山から北東ですから、アサギマダラの南西・北東?への移動習性を理解した上で、登場させているのであれば、なかなかのドラマと言えると思います。単純にチョウと言えばアサギマダラ、ということで登場させているのであれば、…ですね。アサギマダラの愛好者としては、うれしいことですが。

私はNHKのまわしものではありませんが、3回目の登場もあるかもしれませんので、皆さんもご覧になってください(笑)。

本の紹介「モンシロチョウは史前帰化昆虫か? アサギマダラの生活 :長谷川順一著」

冬になると、フィールドに出かける機会がめっきりと減ってしまいますね。そんな時期ですので、アサギマダラに関係した本を紹介します。

タイトルは「モンシロチョウは史前帰化昆虫か? アサギマダラの生活 」。蝶やアサギマダラの研究者の一人、栃木県の長谷川順一さんの著作で、内容は、モンシロチョウとアサギマダラの二本立てとなっています。この時期に読んでみられませんか?

子供の頃から自然の中で遊び、昆虫や花に親しみ、大学では植物を専攻したものの、後に生物全般に関心が広がった長谷川さんが、モンシロチョウは1975年から、アサギマダラは2004年から調査、研究をしています。

モンシロチョウは誰でも知っていてどこにでもいる普通のチョウですね。キャベツの害虫と思っている方が多いと思うのですが、何を食べているのか、実際に何が大好物なのでしょうか?ではその植物はどこにあるのでしょうか?

モンシロチョウが特に好む植物は日本の土着植物か帰化植物かという観点から、食草、移動等を検討しています。

モンシロチョウの蛹や抜け殻さえ見たことがない私は、カラー写真からその多様性に驚かされました。

さて「アサギマダラの生活」は、皆さんにとって一番の関心事ではないでしょうか?

長谷川さんの住む北関東での夏のマーキングと、その成果はグラフや地図などで見ることができます。8月にマーキングした個体が9月、10月、11月と、どのように移動していったのでしょうか?

どのくらいマーキングしてどれほどの再捕獲があったのでしょうか?気になる再捕獲率はどのくらいなのでしょうか?

アサギマダラと言えば、渡りの観点から再捕獲に目を留める皆さんが多いと思いますが、アサギマダラの産卵時期とか、羽化の時期ってどうなっているのか気になりませんか?

長谷川さんご自身が現地に何度も出向いて調査されています。では調査方法はどのようなものなのでしょうか?

記述を通して、私は「長谷川さん、根性がある〜!」と思いました。私個人は、同じことを野外でやっても、たくさんのデータを取るほどには至っていません。信州人がよく口にする「ずくがない」からです。長谷川さんを含め、研究者たちはそのずくの塊です。そして関心も持ったら、それを継続する。その根性の持ち主だからこそ、たくさんのデータが取れて、思わぬ発見もあるんですね。

キジョランがない(と思われる)長野県では秋はもっぱらマーキングですが、栃木県には常緑のキジョランがあり、秋にも産卵を確認できるようです。越冬も確認できているようですので、関東方面の皆さんはこの時期ですら観察する機会がありそうですね。

気象や天敵にも影響を受けるアサギマダラですが、カラー写真からもたくさんのことが学べます。

「今は本が安くできる。パソコンで編集し、表紙まで編集した」と言う長谷川さんです。発行も長谷川さんご自身です。

縦256、横183mm、110ページ、税込み1320円。六本脚、南陽堂書店などで扱っています。

作家「あさぎ まだら」は亡くなられていた

「浅黄 斑」(あさぎ まだら)という小説家がおられることは前から知っていました。「アサギマダラ」で検索すると、「無茶の勘兵衛日月録」という時代劇シリーズなどが上がってきていたからです。最近、近くの図書館でそのシリーズを見つけたので、いくつか読んでみました。このシリーズは20巻くらいが出版されているようで、かなりの長編小説と言えましょう。

その図書館には1、3~9巻しかなく、1、3、8、9巻の4冊を借りました。9巻のカバーの著者紹介には、「関西大学工学部を経て技術系社員として会社勤務の後『雨中の客』で推理小説新人賞を受賞し、文壇デビューを果たす。次いで『死んだ息子の定期券(他)』で第4回日本文芸大賞を受賞し確固たる地位を築く。近年は時代小説に傾注し、徹底した資料収集と分析に基づき、大胆なアイデアと論理的構成で、物語を創り上げて読者を魅了している。」とあります。

「無茶の勘兵衛日月録」シリーズは、江戸時代前記が舞台の時代小説で、越前松平家に関係するいくつかの藩のお家騒動を背景に、越前大野藩で育った「無茶勘」こと落合勘兵衛の成長と活躍を描いたものです。4冊しか読んでいませんが、越前大野、江戸、大坂の公安組織・風俗なども詳しく記されています。特に剣術の記載が秀逸な気がします。

時代小説はあまり読んだことはありませんでした。それでも司馬史観で有名な司馬遼太郎の小説は、綿密な取材に基づく、史実と勘違いされる程の正確な描写が有名で、私もかなり読みました。また、浅田次郎は「平成の泣かせ屋」の異名を持つほどで、『壬生義士伝』や『天切り松闇がたり 闇の花道』などは人情味あふれる作品です。そのように夢中になるほどの魅力はありませんが、「無茶の勘兵衛日月録」シリーズは、時代小説の「青春の門」(五木寛之)といった趣と思います。

ペンネームの「浅黄 斑」は、アサギマダラから取ったものでしょうから、蝶や昆虫には格別な興味があるはずです。たしかに第3巻の158ページに青筋鳳蝶(あおすじあげは)、第8巻「惜別の蝶」の322ページに「シロガネ」・「寿蝶」という地方名でウラギンシジミと思える蝶が登場します。しかし、工学部出身ということもあり、頻出するというほどではありません。

ところで、ウィキペディアでは「1946年- 2020年9月、日本の小説家、推理作家。本名は外本 次男(そともと つぎお)。ペンネームは蝶の一種であるアサギマダラから取られている。・・・2020年9月5日、知人から通報を受けた神戸西警察署の警察官により、死亡しているところを発見された」とありました。残念ながら、死因はわかりませんが、コロナ禍の下で亡くなられたようです。

皆さんも近くの図書館や書店で作品を読んでみてください。

最近のアサギマダラ関連のWebニュース

最近のアサギマダラ関連のWebニュースを拾い集めてみました。多くの記事は一週間ほどで削除されると思われます。

 

  • アサギマダラ、優美な姿紹介 善通寺で写真展(47NEWS四国新聞(2022年5月28日(土) 会員限定)

https://www.47news.jp/localnews/7840672.html

 

台湾からアサギマダラ飛来 龍郷町長雲峠で再捕獲 マークで判明 南西諸島への北上記録、初の可能性 (Yahoo! Japanニュース ・株式会社奄美新聞社2022年5月27日(金))

https://news.yahoo.co.jp/articles/ead71100be28140a4175bfd3a03bdab2de1d39e8?fbclid=IwAR3rjzRvJPZI-k9JBNA6ZJGBGK-rxa_bQgiQjCxeSVyVzIfkuJpVwTEukms

 

  • 台湾からアサギマダラ飛来 龍郷町長雲峠で再捕獲 マークで判明 南西諸島への北上記録、初の可能性 (奄美新聞社2022年5月27日(金))

https://amamishimbun.co.jp/2022/05/26/38012/?fbclid=IwAR1KstfrV1W10_wEDqAH8f4a_S_5FaqbOEfsf4oZOASk0DQe3sSx5QzVBL0

 

・列島縦断「旅するチョウ」1200匹が島で一息 飛来のピーク 大分 (TOS テレビ大分 2022年5月26日(木))

https://news.yahoo.co.jp/articles/d0ac83c38eae1c863a0e8ba33a9b1e572dc6cedf

 

  • 優雅に舞う「アサギマダラ」 宮崎市の民家にチョウの楽園 宮崎県(宮崎ニュース UMK 2022年5月24日(火))

https://news.yahoo.co.jp/articles/9f0ab403c4e73afd136457518698b15a7ecc097f

 

・ 2000キロを旅するチョウ 羽休めのポイントづくり 好物の花「フジバカマ」を小学生が植栽 (Yahoo! Japanニュース ・OBS大分放送 2022年5月24日(火))

https://news.yahoo.co.jp/articles/9f84e94c53f14d002de5f0d9b06c33c10e925084

 

2000キロを旅するチョウ 羽休めのポイントづくり 好物の花「フジバカマ」を小学生が植栽 (OBS大分放送 2022年5月24日(火))

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/obs/52837?display=1

 

  • 北へ行くのよ…旅するチョウ、アサギマダラ飛来 南さつま (南日本新聞2022年5月13日)

https://373news.com/_news/storyid/156018/

 

  • 喜界島のアサギマダラ徳島県で発見 昆虫愛好家、福島さんマーキング (南海日日新聞社2022年4月28日)

https://www.nankainn.com/news/weather/%E5%96%9C%E7%95%8C%E5%B3%B6%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%82%B5%E3%82%AE%E3%83%9E%E3%83%80%E3%83%A9%E5%BE%B3%E5%B3%B6%E7%9C%8C%E3%81%A7%E7%99%BA%E8%A6%8B%E3%80%80%E6%98%86%E8%99%AB%E6%84%9B%E5%A5%BD%E5%AE%B6

 

  • 旅するチョウ「アサギマダラ」 だれが放した? 鹿児島県本土→奄美大島・喜界・沖縄 羽にマーキングの3羽 (南日本新聞2022年3月07日

https://373news.com/_news/storyid/152670/

 

ドラマ「やんごとなき一族」にアサギマダラが登場

少し前に、NHKの朝の連続ドラマ「ちむどんどん」のオープニング映像にアサギマダラが登場する、という記事を書きました。今度は「やんごとなき一族」にアサギマダラの標本が登場したことを報告します。

私の娘がドラマ好きで、この4月に放送が始まった「やんごとなき一族」の第二話にアサギマダラらしい標本が出た、と知らせてくれました。映像を確認してみると、尾上松也が演じる長男の夫婦の自室に標本箱があり、そこにアサギマダラの標本2頭がありました。他にはオオルリアゲハ、オオタスキアゲハ?、リュウキュウアサギマダラ、ルリマダラ類などが確認できました。

あまり仕事ができない長男は、蝶の標本収集を趣味としている、という設定のようです。次男とその嫁が主人公で、三男は車が趣味だったと思います。医者などのリッチな方たちは、トリバネアゲハ類や、ゼフィルス類などの収集家が多いのですが、この長男の標本箱の種類を見ると、特にこだわりが感じられません。スタッフが撮影用に適当に集めた標本を使ったのかもしれません。

いずれにしろ、アサギマダラが中心に撮影されていて、やはり蝶といえばアサギマダラ、という雰囲気がドラマ界にある一例と思います。

「やんごとなき一族(ドラマ)見逃し再放送や無料動画を視聴する方法|1話~最終回まで全話フル配信」を見ると、まだ見れる機会があるようです。どうぞ、ご確認ください。

朝ドラ「ちむどんどん」とアサギマダラ

たまにNHKの朝の連続ドラマを見ることがあります。4月から始まった「ちむどんどん」をボーと見ていたら、びっくりしました。オープニングの映像にアサギマダラが出てきたんです。動画ですが、実映像でなく、アニメでした。

それから毎日出るだろうと、楽しみにしていましたが、残念ながら出ませんでした(笑)。ところが、先週の月曜に見たら、やはりアサギマダラが出てきました。ググってみたら、どうやら月曜のオープニング映像だけにアサギマダラが出るようです。

巷の意見では、南西諸島に多いリュウキュウアサギマダラの方が、やんばる地方のドラマとしてはふさわしいのでは?、という意見があるようです。それも理解できるのですが、主人公の女の子が沖縄本島北部で育ち、東京へ行くはずなので、アサギマダラの方がふさわしい気がします。

10月頃に南下移動したアサギマダラのメスは、沖縄本島にたくさんあるガガイモ類に産卵します。そこで育ったアサギマダラの新成虫が4月頃から北上します。中には東京周辺に現れる個体もあるでしょう。その生態まで考慮すると、やはりアサギマダラの方でしょう。

「鬼滅の刃」でもアサギマダラが出てきました。日本の蝶といえばアサギマダラという雰囲気が出てきたな、と愛好者としては、とてもうれしい出来事でした。

明日は月曜なので、皆さんもぜひご確認ください。