和歌山県の低地にもアサギマダラが下りてきました!

昨日(10月4日)、急に気温が低下したせいか、和歌山県の低標高地にもアサギマダラが姿を現しました。

朝に田辺市龍神村殿原のフジバカマ園(標高360m)のコバノフジバカマの花に訪花したオスの写真を、管理者の杉本町子さんから送っていただきました。また、午後14時頃に日高川町美山支所前(標高150m)を飛ぶアサギマダラを目撃しました。この2点から、確実に低標高地に下りてきていることがわかります。

和歌山県の今年のアサギマダラについては、北上の季節である初夏には特に目立った目撃記録はありませんでした。8月末に次の新聞情報がありました。

旅するチョウ「紀州の屋根」に 晩夏の護摩壇山にアサギマダラが

護摩壇山山頂付近のヨシノアザミ

飛来、和歌山

護摩壇山のヨシノアザミの花が開花し始めて、8月28日にアサギマダラが集まっている(標高1200m付近)、という情報です。例年では、10月上旬に多数が通過するのですが、約1か月も早い出現です。9月下旬にこの記事を見つけて、私も慌てて護摩壇山に調査に行きました。

9月24日に白馬(しらま)林道を走って、「ごまさんスカイタワー」まで行きましたが、アサギマダラの姿を見ることはできませんでした。翌日、護摩壇山山頂に登っても、ヨシノアザミは開花していましたが、おりませんでした。

スカイタワー近くのスカイライン沿いにオタカラコウが開花していました。紀伊民報の写真では、9月中旬にオタカラコウに訪花しているアサギマダラが見られます。この日は姿を見ませんでした。

スカイタワー近くのオタカラコウ

10時頃に森林公園案内所近くで2頭目撃し、帰りに龍神スカイラインへ少し戻ったところでも2頭目撃しました。案内所の管理人は、アサギマダラが訪花するヨシノアザミを刈らないように注意しているそうです。8月末~9月下旬の間に少ないながらも数頭のアサギマダラが、オタカラコウや、森林公園のヨシノアザミに訪花し続けていたのではないか、と想像しています。これらのアサギマダラは、紀伊半島のイケマ、ガガイモなどのガガイモ類で育ったもので、日中でも25度以下の適温である山頂付近で上下動をしていたのでしょう。

標識したアサギマダラのオス

帰路の有田川町川合白井山の白馬林道(標高858m付近)で、ヒヨドリバナに集まってくるアサギマダラ6オスを標識しました。9月25日にはこのあたりまで下りてきていたことがわかりました。記録はアサギマダラ年鑑の2023年・和歌山県・標識で見ることができます。

秋の本格的な移動シーズンを迎えた和歌山県では、次のイベントが予定されています。

10月14日(土) 10時~ 「アサギマダラ祭り・小町カフェ8周年」(田辺市龍神村殿原のフジバカマ園)

10月22日(日) 10時~ 「第2次観察会:アサギマダラ西山観察会」(日高町西山アサギマダラの谷、参加受付終了)

10月29日(日) 10時~ 「アサギマダラ祭り」(上富田町市ノ瀬だるま寺)

いずれも移動の最盛期に開催されます。満開のフジバカマ類の花と訪れるアサギマダラを見に、あなたも出かけてみてください。マーキングをされる方は、撮影している人の邪魔をしないようにお願いいたします。

アサギマダラが蛹になりました!

 

蛹化の翌日の写真

飼育・観察していた幼虫が、4月18日午後についに蛹になりました(左の写真)。きれいな緑色のだるま形の蛹です。数日すると成虫が羽化するでしょう。蛹になりたてなので、まだ黒い紋や、銀色の紋が目立ちません。

前報で報告したように、野外で発見した3齢幼虫を室内で飼育・観察しています。食草のキジョランの小株を鉢植えにして、そこに幼虫をつけてやりました。幼虫は葉の中央の脈をかじって、V形の食痕をつくりながら、どんどん成長しました。そして、食草を離れ、近くにあった時計の表面に静止して、脱皮の態勢となりました(下写真)。

脱皮態勢の3齢幼虫。右へ90度回転したもの。

頭部の次の前胸のあたりがふくらんでいるのは、4齢幼虫のヘッドカプセルがすでに形成されつつあるからです。4月2日に4齢幼虫になり、またどんどんキジョランの葉を食べました。そして葉の裏側の中央で脱皮態勢となりました(下の写真)。脱皮の際に食草から離れると思いましたが、食草上で脱皮することもあるとわかりました。

葉の中央で脱皮態勢の4齢幼虫。180度回転したもの。体長約20mm。2023:04:09 10:17:47

この写真は、前胸のあたりの終齢幼虫の頭部のふくらみがわかりやすいですね。3齢幼虫との違いは、腹脚のある腹節の背面の斑紋が白色でなく、他の節と同様に黄色であることです。また、前胸あたりにある突起が頭部の長さより長いことでしょう。3齢幼虫では、頭部と同じくらいですね。

4月9日に終齢幼虫となりました。終齢の5齢幼虫は、食欲がすごく、葉柄をかじっては、先端部から葉の全体を食べてしまいます。キジョランの小さな株だったので、全て食べつくしてしまうのではないかと心配しました。3齢後半~5齢の最後までに、小さめな葉をほぼ5枚食べました。そして、巨大な幼虫となりました(下の写真)。

5齢幼虫は側面の黄色紋がうすいですね。ストロボの発光の影響もありますが、区別点になると思います。脱皮したては齡の間の違いがわかりにくいことがあります。脱皮したての4齢幼虫は、3齢と同様に背面の黄色紋が白っぽかった気がします。

葉を食べつくした5齢幼虫。体長約45mm。2023:04:15 19:21:24

葉を十分食べて、鉢植えの鉢のへりを歩いているのを見つけました。蛹になるときに食草から離れることが知られています。蛹化や羽化の様子を観察したいので、見失わないように、透明なプラスチック容器に入れました。そして、ついに蛹になったわけです。

前報でも書きましたが、室内の方が野外より気温が高くて成長が早いですから、ちょうど野外ではこれから終齢幼虫が蛹になるところでしょう。ぜひ見つけてみてください。

春のアサギマダラの幼虫を発見するのは今だ!

越冬したアサギマダラの幼虫がちょうど今頃に終(5)齢幼虫になります。幼虫の大きさが最大になる今が、アサギマダラの幼虫を探すのに一番いい時期でしょう。お近くの低山地にキジョランがあれば、ぜひ探してみてください。

先日の3月30日に私も和歌山県日高川町熊野川の標高約500mの林道脇(右写真)でキジョラン上の幼虫を発見しました。

そこは前からキジョランが数株生えていて、3年ほど前に幼虫を2頭ほど発見したことのある場所です。今年も円痕がたくさんあり、3齢幼虫を1頭見つけました(下写真)。

写真がうまく撮影できなかったので、葉を取って、道路に置いて撮影しました(下写真)。

この幼虫は、昨年秋11月頃の南下シーズンにこのキジョランを探し当てたメスが産卵した卵から孵化したものでしょう。1~2齢の若齢幼虫で今年1月の寒波をのりこえて、春の陽気でどんどん成長しているところだったと思います。

今、この幼虫を室内で飼育・観察していますが、4月2日に脱皮して4齢幼虫になり、4月9日に終齢幼虫となりました。室内の方が野外より気温が高くて成長が早いですから、ちょうど野外ではこれから終齢幼虫となる4齢幼虫が多いと思います。

アサギマダラの幼虫を発見するのは今です。お近くのキジョランを調べてみてください。キジョランはどこにでもある植物ではありませんが、関東以南の低山地を探せば見つかるはずです。新鮮な食痕があれば、幼虫が発見できると思います。

イケマを好むジュウジナガカメムシ:長野県

先日、アサギマダラの会のまとめ会で講演会があり、講師の先生がキジョランやイケマなどを好む虫の名前をいくつか出されたんですね。

アサギマダラの幼虫が好む植物の中で長野県で見るのはイケマが多いですが、実はそのイケマを好むのはアサギマダラの幼虫だけではなく、ジュウジナガカメムシもイケマが大好物だということを知りました。

長野県松本市美ヶ原林道 標高:1,300m付近 2022年6月8日撮影

ヒメジュウジナガカメムシやジュウジナガカメムシに新芽が加害されると、その植物が枯死することもあるとのことでした。それで、まとめ会の後、メモを見ながら、気になって過去のデータを探してみました。

現地のイケマを撮影した画像を確認したところ、講師の先生が見せてくださった、赤いカメムシに似たカメムシがいくつか出てきました。

その画像のカメムシが該当のカメムシなのかはまったく分からなかったのですが、アサギMLにアップしてお聞きしてみました。

上の画像がそれです。早速何人もの皆さんが反応し、先生方が画像を確認してくださり、ジュウジナガカメムシだとのことでした。

イケマでアサギマダラの卵を確認していた時、たまたまイケマの葉っぱにカメムシがいたので撮影しただけだったのですが、このカメムシもイケマが大好物だったと知ることになりました。

よく似たカメムシでヒメジュウジナガカメムシは、どうやら長野県よりも暖かいところにいるようです。暖かい地方の皆さんは、ガガイモやキジョランなどで確認できるかも知れませんね。

赤い色とシャレた模様がとってもきれいですが、このカメムシたちが集団でアサギマダラの食草を吸汁し尽くしてしまえば、アサギマダラが産卵する食草はあっという間になくなってしまいそうです。

上の個体は6月8日の撮影で、交尾でした。9月3日にはイケマにいた集団の個体を撮影しており、それは幼虫だったようです。

皆さんのところでも、アサギマダラの食草に、このようなカメムシやアブラムシなどがいるでしょうか?

もしいましたら、画像とともに、撮影年月日、場所(座標もわかれば)、撮影者の実名を添えて、このブロクか、Facebookアサギマダラ・マーカーの広場にぜひ情報を提供してください。

上の個体の簡単な確認情報です。このような感じで構いません。

イケマを食べるカメムシ情報】
確認地:長野県松本市美ヶ原林道
座標:36.25089, 138.03311付近
標高:1,300m付近
確認日:2022年6月8日
撮影者:田原富美子

MLで情報を共有させていただき、専門家の先生方にお聞きしてみますね。

カメムシだけがアサギマダラが増えたり減ったりする大きな要因とはならないかも知れませんが、何らかの手がかりの一つになったらいいですね。よろしくお願いいたします。

本の紹介「モンシロチョウは史前帰化昆虫か? アサギマダラの生活 :長谷川順一著」

冬になると、フィールドに出かける機会がめっきりと減ってしまいますね。そんな時期ですので、アサギマダラに関係した本を紹介します。

タイトルは「モンシロチョウは史前帰化昆虫か? アサギマダラの生活 」。蝶やアサギマダラの研究者の一人、栃木県の長谷川順一さんの著作で、内容は、モンシロチョウとアサギマダラの二本立てとなっています。この時期に読んでみられませんか?

子供の頃から自然の中で遊び、昆虫や花に親しみ、大学では植物を専攻したものの、後に生物全般に関心が広がった長谷川さんが、モンシロチョウは1975年から、アサギマダラは2004年から調査、研究をしています。

モンシロチョウは誰でも知っていてどこにでもいる普通のチョウですね。キャベツの害虫と思っている方が多いと思うのですが、何を食べているのか、実際に何が大好物なのでしょうか?ではその植物はどこにあるのでしょうか?

モンシロチョウが特に好む植物は日本の土着植物か帰化植物かという観点から、食草、移動等を検討しています。

モンシロチョウの蛹や抜け殻さえ見たことがない私は、カラー写真からその多様性に驚かされました。

さて「アサギマダラの生活」は、皆さんにとって一番の関心事ではないでしょうか?

長谷川さんの住む北関東での夏のマーキングと、その成果はグラフや地図などで見ることができます。8月にマーキングした個体が9月、10月、11月と、どのように移動していったのでしょうか?

どのくらいマーキングしてどれほどの再捕獲があったのでしょうか?気になる再捕獲率はどのくらいなのでしょうか?

アサギマダラと言えば、渡りの観点から再捕獲に目を留める皆さんが多いと思いますが、アサギマダラの産卵時期とか、羽化の時期ってどうなっているのか気になりませんか?

長谷川さんご自身が現地に何度も出向いて調査されています。では調査方法はどのようなものなのでしょうか?

記述を通して、私は「長谷川さん、根性がある〜!」と思いました。私個人は、同じことを野外でやっても、たくさんのデータを取るほどには至っていません。信州人がよく口にする「ずくがない」からです。長谷川さんを含め、研究者たちはそのずくの塊です。そして関心も持ったら、それを継続する。その根性の持ち主だからこそ、たくさんのデータが取れて、思わぬ発見もあるんですね。

キジョランがない(と思われる)長野県では秋はもっぱらマーキングですが、栃木県には常緑のキジョランがあり、秋にも産卵を確認できるようです。越冬も確認できているようですので、関東方面の皆さんはこの時期ですら観察する機会がありそうですね。

気象や天敵にも影響を受けるアサギマダラですが、カラー写真からもたくさんのことが学べます。

「今は本が安くできる。パソコンで編集し、表紙まで編集した」と言う長谷川さんです。発行も長谷川さんご自身です。

縦256、横183mm、110ページ、税込み1320円。六本脚、南陽堂書店などで扱っています。

キジョランで蛹だったアサギマダラが旅立つ:熊本県熊本市

4月27日付けのブログの、益田勝行さんが熊本市内で24日に確認してくださったキジョランにあった黄緑色の蛹ですが、「昨日(4月30日)、蛹を見てみたら羽化し無事旅立った模様です」と、先ほど益田さんから連絡が入りました。

 

4月30日までに旅だったアサギマダラの蛹の抜け殻:益田勝行さん提供

 

キジョランでアサギマダラの蛹と抜け殻確認:熊本県熊本市

あの後、あの綺麗な蛹が1週間ほどで羽化したんですね。

確認前に旅立たれてしまった益田さん、「ということで、私はまだ今年はアサギマダラを見ていません(笑)」と、ちょっぴり嬉しいやら、成長を見れずに残念なような・・・

でも、熊本市内の「立田山の別の場所の方から、昨日と今日アサギマダラを1頭づつ見たと伺いましたので、そちらへ立ちよったのかもしれません」と、ちょっとホッとしたような気持ちの益田さん。笑顔が目に浮かびますね。

無事に羽化し、あちこち立ち寄りながら北東を目指す旅に出たのかも知れません。オスだったのかメスだったのか、いつ羽化したのかなど疑問は想像として膨らむばかりですが・・・この先素敵なパートナーと出会い、無事に旅を続けてほしいですね。

秋にはきっと次の世代の子どもたちと一緒に、大家族になって熊本に戻ってくるのかも知れませんよ。

さて、どこに立ち寄って皆さんにお会いできるのやら。マークもありませんが、出会った皆さんからのご報告をお待ちしております。

アサギマダラの初見情報:兵庫県神戸市

暑かったり、涼しくなったりしていますが、このような気温の変化の中でアサギマダラはどうしているのでしょうね?

兵庫県の渡辺康之さんを通して杠隆史さんから、アサギマダラの目撃情報が寄せられました。

杠さんは4月27日午前1110分、神戸市灘区鶴甲 表六甲ドライブウェイ道路上で、アサギマダラが1頭飛んでいるのを目撃したとのことでした。

渡辺さんによると「数年前に武庫川中流の武田尾(宝塚市玉瀬)の栗林で5月上旬にアサギマダラを目撃したことがあり、この時期の北上、東行の個体と思われます」とのこと(asagi:04057)。

渡辺さんご自身も425日、その付近のキジョランで5齢幼虫を確認しておられます。

さらに飼育していた幼虫は427日から羽化したので、マークして放したそうです。

2021年の兵庫県からの報告によりますと、4月30日に淡路市岩屋でスナビキソウに訪花するアサギマダラが確認されており(asagi:037289)、5月7日には豊岡市竹野町で、同じくスナビキソウで確認されています(asagi:037328)。

渡辺さんは「もうすぐ淡路島のスナビキソウ群落に集まるようになります」とおっしゃっていますので、お近くの皆さん、機会がありましたら淡路島のスナビキソウ群落を探してみてください。南からの貴重な数少ない北上個体出会えるかも知れません。

マークのついた個体を再捕獲したり撮影されましたら、ぜひ画像を添えてご報告ください。

杠さん、渡辺さん、貴重な情報に感謝いたします。

キジョランでアサギマダラの蛹と抜け殻確認:熊本県熊本市

アサギマダラの会員で熊本県にお住まいの益田勝行さんから24日、熊本市内の知人が育てているキジョランの葉裏で撮影したアサギマダラの蛹と蛹の抜け殻の画像を、提供していただきました。

益田さんが確認されたのは雨上がりとのことですが、緑色の蛹、とっても綺麗ですね。翅の一部が透けて見えますね。

アサギマダラの蛹 熊本市にて:益田勝行さん提供 2022年4月24日撮影

 

益田さんの知人の方は、アサギマダラを呼ぶために吸蜜植物のフジバカマの他に、幼虫の食草となるキジョランなども育てているそうです。

益田さんが20日に伺ってキジョランを確認したところ、2つの蛹があり「羽化してくれたら・・・」と期待していました。

その後、24日にも伺って確認したところ、抜け殻を2つ、蛹をひとつ確認して撮影できました。それが上と下の画像です。

アサギマダラの蛹の抜け殻1 熊本市にて:益田勝行さん提供 2022年4月24日撮影

もう一つはこれです。

 

アサギマダラの蛹の抜け殻2 熊本市にて:益田勝行さん提供 2022年4月24日撮影

 

昨年の羽化は4月15日に初めて羽化したとのことで、今年は20日以降ですので、若干遅いのかもしれません。

益田さんは「最後の蛹も無事羽化して旅立ってくれたらと思います」と、話しています。熊本市から旅立つ日はもうそろそろかも知れませんね。

益田さん、貴重な画像と情報提供を有難うございました。