【アサギマダラの産卵を7月に確認・でも不思議がいっぱい】

アサギマダラの生態を観察する機会は春や秋の花畑や山でのマーキング以外にはそうそうあるものではありませんが、皆さんはどの程度アサギマダラの不思議に近づいてきたでしょうか?

春の海岸のスナビキソウで北上のアサギマダラを観察することができるようですが、秋にはアサギマダラの南下に伴ってフジバカマの花畑でアサギマダラをたくさん見る方も多いかも知れませんね。

メーリングリストやFacebookの書き込みで、アサギマダラの交尾を撮影したとか、オスのヘアペンシルを撮影したなどの情報が入ってくると、ちょっワクワクするものですね。滅多に見る機会がないからですよね。

長野県に住んでいても去年はなかなか山に行けなかった私ですが、今年になって7月31日にある方の別のチョウの調査に同伴して朝日村の林道鉢盛山線で、ゲートから鉢盛山登山口までの区間、車を走らせ、たまたま標高1465m付近でアサギマダラを観察する機会がありました。

イケマの周辺にいたアサギマダラを見つけ、思わずカメラを握り締めました。アサギマダラはイケマの葉裏に止まりましたので、葉の表から撮影。葉とアサギマダラが見えるように回り込みたかったのですが、動いてしまい、とりあえずピンボケでもいいからとシャッターを切りました。

2025.7.31-506 アサギマダラ イケマに産卵中11:15

これは直感ですが、イケマにアサギマダラがいたと言うことは、メスの産卵だと判断し、とっさにアサギマダラがいた葉に近づいて葉を裏返すと、やはり白い卵が。

2025.7.31-548アサギマダラの産みたての卵11:17

その同じ株の上の方の新芽には2つの卵も確認できました。同じ個体の卵なのでしょうね。3卵を確認できました。

2025.7.31-554小さなイケマの新芽にアサギマダラの卵を2卵確認11:17

アサギマダラはすぐ近くのクマザサの葉に止まり、さらに別の葉に移り、そこでじっとしています。産卵を終えて疲れ切ってしまったのでしょうか?

卵があったイケマの近くから動くこともなく、私が何度もカメラのシャッターを切ってもそのままです。うるさいシャッター音がするのに、逃げる様子もなく、疲れて眠りについたかのようです。

いつもでしたら捕まえてマーキングするのですが、そのアサギマダラを見た私はとてもマーキングする気になれず、そっと観察を続けました。

2025.7.31-612クマザサで休み続けるアサギマダラ11:15-11:24

メスのその個体の翅はボロボロで、浅葱色の部分にはシミも見えます。

翅の状態から考えれば、春に暖かいところで羽化したアサギマダラなんでしょうね。マークは確認できませんでしたが、どこから来たんでしょうね?メーリングリストで報告を出してくださる南の方の皆さんの顔が思い浮かびます。

産卵を終えたばかりのアサギマダラです。マークしようと思えば捕虫ネットもマーキング表もフェルトペンも持参していますし、素手で捕まえることも簡単にできました。でもアサギマダラの気持ちになれば、休ませてあげたいと思ったのは、女心からかも知れません。

でも、なぜアサギマダラは遠くに舞って行かなかったのでしょうか?人間が近くにいても平然と卵の近くに留まっているんです。これも女心なのでしょうか?いえ、親心があってのことだったりすれば、アサギマダラに感情があるってことですよね。そんなことってあるんでしょうか?

マーキングよりも観察を選び、10分弱その場所に私たちも留まりました。しかし目的があって林道に行っているので、いつまでもそのままでいられなく、私たちの方が先にその場所から移動することにしました。

葉っぱの表から撮影とはいえ、私がアサギマダラの産卵を確認したのは恐らく初めてのことです。

山のイケマの葉裏で卵は時々発見していましたが、産卵するアサギマダラは見たことがなかったように思います。

ヒメギフチョウやモンキチョウ、アゲハの産卵は何度も見ていますが、産卵は蝶の不思議な行動の一つですね。

どうやって幼虫の食草の葉を見分けるのでしょうか?株が小さくても見分けています。

産卵に葉の裏を選ぶのはなぜなのでしょうか?直射日光が当たらないからなのでしょうか?卵が雨に濡れないためでしょうか?

下を向いているに卵が葉っぱから落ちないのはなぜなのでしょうか?

小さな新芽に卵が二つもありましたが、食草が足りるのでしょうか?

人間でもお産には相当の体力を使いますが、チョウの場合はどうなんでしょうか?動かなくなるほどじってしていることを考えれば、やはり相当の体力を使っての産卵なのでしょうか?

7月末の産卵ですので、卵が成長して成虫になって、アルプスを越えて南に移動するのに、気温が下がりすぎる前の時期に成長が間に合うのでしょうか?

そんなメスのアサギマダラが2000km以上も移動した例もあることを考えると不思議がいっぱいでたまりません。

そんな素朴な疑問がいっぱいあるので調査をやめられないでいる私です。

ヒレハリソウ(コンフリー)に訪れた翅がボロボロのアサギマダラ:長野県朝日村

ヨーロッパ原産でムラサキ科の帰化植物ヒレハリソウ(コンフリー)をご存じでしょうか?明治時代に日本に入ってきて、家畜だけではなく人間も天ぷらなどで食用としていた過去の野菜です。そのコンフリーに近年アサギマダラが訪れており、今年もオスの個体を6月1日に確認しました。

(ヒレハリソウ(コンフリー)の周辺を舞う翅がボロボロのアサギマダラ♂:長野県朝日村 2022.6.1)

ボロボロになった翅の様子からして、きっと暖かい地方から、幾つもの山を越えて長野県にやってきた個体だろうと思われます。これがコンフリーの周辺に訪れた個体です。

コンフリーは、恐らく日本各地にどこにでもあるだろうと思いますが、長野県中央部の西側に位置する朝日村でも、どこということもなく点在しています。5月下旬から6月にかけて、薄紫の花を咲かせ、道端や耕作放棄地、家の庭のようなところでよく見かけます。

食べられると聞いていたので、過去に天ぷらにして食べたことがあります。ウドなどの山菜には独特の風味があるのですが、コンフリーにはクセがなく、美味しいわけでもまずい訳でもありませんでした。

でも、そのコンフリーはアルカロイドを含むということで近年は口にすることもないのですが、多年草なので抜かない限りその場所で毎年花を咲かせているのです。

実はそのコンフリーにアサギマダラが来ることを知ったのは2016年のことです。朝日村の実家の庭のコンフリーで、アサギマダラのメスが吸蜜していたからです。

(コンフリー(ヒレハリソウ)で吸蜜するアサギマダラ♀:長野県朝日村2016.6.1)

アサギML(メーリングリスト)で情報を流しましたところ、広島の本田計一先生から「そちらにまだ沢山生えているのなら、オスが集まるかどうかなど(刈り取って乾燥させた方がベター?)調べてみられると面白いと思います」と、お返事いただくことができました。

本田先生にお聞きしましたように、自宅の柿の木の下に、刈り取ったコンフリーの葉っぱを束にして吊るしておきました。コンフリー自体の葉っぱの匂いは、生よりは乾燥の方が強くなっているのを感じることができました。でも、吊るした時期が悪かったのか、山際の家ではないためなのか、アサギマダラは来ませんでした。

その後、北アルプス山麓周辺でコンフリー調べを行いました。行った先々で出会ったら写真撮影して記録した程度ですが、小谷村、大町市、生坂村、松川村、松本市、朝日村など、どこということなく点在するのですが、まとまってある訳でもなく、その周辺をアサギマダラが乱舞する訳でもありませんでした。

実家から持ってきた自宅のコンフリーは数年間そのままにしていましたが、アサギマダラが来ないために5、6株あった株を1株だけ残して昨年抜いてしまいました。

一方、実家の朝日村へは、時々庭や畑などの管理のために出向いており、葉っぱを乾燥させて吊るすまでもなく、コンフリーの枯れ葉は地面にそのままにして、放置していました。近所の家などにもコンフリーがあり、それもそのままの状態でした。

そうした状況の中、昨年5月25日、朝日村の実家の庭でコンフリーの周辺を舞うアサギマダラのオスを観察できました。花が咲き出してからのことです。

(コンフリー(ヒレハリソウ)の周りを飛翔するアサギマダラ♂初見:長野県朝日村2021.5.25)

吸蜜する訳でもないのですが、花の周辺や根元付近を何かを探しているかのようにぐるぐると回りながら舞っているのです。

(コンフリー(ヒレハリソウ)の周りを飛翔するアサギマダラ♂初見:長野県朝日村2021.5.25)

枯れ葉を根元にそのままにしていたので、その乾燥した匂いに引き寄せられたのかも知れません。

今年も草取りなどで朝日村通いを続けていますが、5月には期待していたアサギマダラを確認できないでいました。

しかし6月1日の昨日、庭に乗り入れた車に驚いたようにアサギマダラが一頭、舞い上がりました。その後どことはなしに姿を消してしまいました。また来るかも知れないと期待していた頃に、コンフリーの周辺を翅を忙しく動かして舞うアサギマダラを見つけ、撮影することができました。

(ヒレハリソウ(コンフリー)の根元付近を舞う翅がボロボのアサギマダラ♂2022.6.1)

昨年に引き続き、オスが2回来てくれました!

今年も、枯れて腐りかけたような葉っぱは根元周辺にそのままにしています。その匂いに惹きつけられたのでしょうか?

オオブタクサの新芽も伸び出している、そんな庭にも来てくれたことは嬉しいことです。ネットは車に入れていますが、カメラでの撮影が精一杯で、マークがないことを確認できただけです。

翅の下側がたくさん欠けて、ボロボロになっていました。きっと苦労しながらの北上の途中で立ち寄ってくれたのでしょうね。昨年より7日間遅い、6月に入ってからの確認でした。

長野県ではすでに軽井沢町、宮田村、小谷村、大町市、伊那市、大鹿村などから初見情報が寄せられています。さらに北海道奥尻島からの初見・標識情報も5月中に寄せられています。

引き続き国内各地で観察されたり、マーキングされたりするでしょうね。今後の皆さんからの情報を楽しみにしております。

このオスのアサギマダラにちょっと期待します。素敵なメスと出会えますように。