MLへの報告 ー初心者のためのマーキング講座(6)

今回はアサギマダラなどの移動昆虫のメーリングリスト(ML)「asagi」への報告方法を解説します。MLは、登録されている電子メールアドレスから、決められたメールアドレスにメールを出すと、登録されているメンバー全員に、そのメールが配信されるシステムです。

このMLasagiは、1998年3月に始まった、アサギマダラ関係のMLとしては最も古くて大きいものです。運営は大阪市立自然史博物館(長田学芸員が担当)により行われています。このMLには熱心なアサギマダラのマーキング愛好者のほとんどが参加していますから、前回紹介したスマホ・アプリ経由でアサギマダラ年鑑に登録され、さらにこのMLに標識情報や再捕獲情報をメールで流しておけば、完璧なデータ報告となります。

このMLに参加登録するには、アサギマダラ・マーカーの広場の左中央をご覧ください。無料で登録できます。MLに登録されると、10月などの最盛期には1日あたり10通以上の再捕獲メールが届きます。それでご自分の標識したアサギマダラが再捕獲されたらすぐにわかります。あまりのメール数の多さに支障をきたすことがありますので、仕事関係のメールアドレスではなく、Gmailなどの別なフリーメールアドレスを登録すると便利でしょう。

ところが、検索が容易という利点もあるGmailでMLにメールを出しても、MLからのメールが自分には戻ってこない(メール容量削減のために同じIDのメールを蓄積しない?)仕様になっていますから、ご承知ください。他のフリーメールアドレスでは戻ってくると思います。MLに参加したら、届くメールをしばらく見て慣れてください。

前回紹介したスマホ・アプリで標識情報を登録すると、このMLへの報告に適した形式に変換して表示してくれる方法があります。標識記録を入力した後に、
http://www.asagi-org.jp/mark-hyoji.html
というURLをクリックすると表示されます。それらの必要な部分だけを選択・コピーします。このマーキング講座で紹介した白馬山で標識・入力したデータをペーストすると、次のようになります。

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標識  :IKA 002-014 HDG 10.10
全頭数 :13
オス数 :8
メス数 :5
標識地 :和歌山県有田川町宇井苔白馬山麓
標高 (m):632
北緯東経:34.0122,135.3649
標識日 :2021-10-10T00:00:00.000Z
標識者 :金澤 至
備考  :ほとんどヨシノアザミ訪花。
報告者 :金澤 至

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標識日の時間が入力されていませんので、「T00:00:00.000Z」になっていますが、この部分は削除してかまいません。これをMLasagiへの報告メールにペーストして、他の参加者のメールにならって、前書きなどをつけて出せばよいでしょう。

次回は捕獲したアサギマダラにマークがあった(再捕獲)ときの対応方法を解説する予定です。

再捕獲の処理 -初心者のためのマーキング講座(7)

マークのついたアサギマダラを見つけたら -初心者のためのマーキング講座(2)

マークを付ける準備 -初心者のためのマーキング講座(3)

マークを付けよう! -初心者のためのマーキング講座(4)

位置情報とスマホ・アプリ -初心者のためのマーキング講座(5)

位置情報とスマホ・アプリ ー初心者のためのマーキング講座(5)

前回紹介した記載例にある緯度経度(34.0122,135.5649)は、実は後でパソコン(PC)のグーグルマップで調べたものです。最近開発した、位置情報も入力してくれるスマホ・アプリを使おうと思ったら、電波が届かずに困ったのです。今回はそのあたりを解説します。

再捕獲があると、標識地と再捕獲地の間の直線距離を移動距離として報告します。アサギマダラは直線で飛ぶことはありませんので、私たちはあくまで目安と考えていますが、特に最長距離移動はマスコミなどでは昔から重要な情報として扱われてきました。標識地の位置情報を明記しておかないと、白馬山などの地名で適当に計算されてしまいます。どんどんデータの質が低下していきます。

位置情報としては、スマホがない頃は、分布図の作成などでメッシュコードが活用されていました。緯度経度(60進法)は昔からありましたが、度分秒など表記法が様ざまで、あまり活用されませんでした。メッシュコードが使われなくなった原因は、このコードが基本とする日本測地系と世界測地系が約450mずれていて、変換が必要となったことが大きいと思います。そしてインターネットとスマホの普及が決定的でした。そこでは世界測地系の緯度経度(10進法)が基本でした。精度によって小数点以下の桁数が異なりますが、半角と全角の違いくらいで誰が入力してもあまり変わりません。私は小数点以下4桁まで(全て半角数字)を基本にしています。日本周辺に関しては、「N(北緯)」と「E(東経)」は必要ないでしょう。

PCのグーグルマップで緯度経度(10進法)を調べるには、調査地点を表示させ、その地点を右クリックすると表示される窓の一番上に緯度経度があります。その数字を左クリックすると、クリップボードに保存されますから、必要なところにペーストできます。あるいは、「この場所について」をクリックすると、最下段に住所と緯度経度が表示されますので、選択してコピーできます。

最近、スマホ・タブレット・PCで動くマーキング用アプリが開発されました。

Marking Helper

です。ぜひご覧ください。

その日にマーキング作業が終了したら、その現場で入力するのがおすすめです。まずスマホの位置情報をオンにしてください。そしてこのアプリを起動すると、地図上にこのアプリで入力された再捕獲記録がアイコンで表示されます。右下のななめの→を押すと、ご自分の位置が表示されます。その下のアイコンを押すと、左の写真のようにリスト表示になります。最下段右端の使用方法のタブを押す(クリック)と、説明が読めます。中央の標識記録を押すと入力された記録が表示されます。

右上の+を押すと、標識記録を追加入力できます。標識、オスの数、メスの数などのまとめ入力なので、代表的なものを1つだけ現場で入力して、右上の完了を押すと記録されます。入力途中にある「現在位置を使用」をチェックすると、位置情報を自動的に取得して入力してくれます。これがとても便利です。そして、家でその記録を表示させ、右上のペンアイコンを押すと、修正することができますから、まとめ入力を完成するといいでしょう。英数字は全て半角で入力してください。

標識したデータをきちんと入力していただければ、年末に私の方でアサギマダラ年鑑にまとめて書き込む予定です。その時点で中途半端なデータは削除します。それまでにきちんと修正しておいてください。注意事項としては、修正などはご自分のデータだけにしてください。いたずらは禁止ですし、記録されています。

次回はメーリングリスト(ML)への報告方法などを解説します。

MLへの報告 -初心者のためのマーキング講座(6)

マークのついたアサギマダラを見つけたら -初心者のためのマーキング講座(2)

マークを付ける準備 -初心者のためのマーキング講座(3)

マークを付けよう! -初心者のためのマーキング講座(4)

マークを付けよう! ー初心者のためのマーキング講座(4)

さあマーキングをやってみましょう。フジバカマ類に訪花しているアサギマダラを発見したら、捕虫網で捕獲しましょう。吸蜜している個体を捕獲するのが最も簡単です。午後にオスがよく行う占有飛翔のように、くるくると上空を飛翔していて、おりて来ないときには、左手(利き手でない方)で白いタオルを回転させると、誘引されておりてくることがあります。それを右手(利き手)の捕虫網で捕獲します。これをタオル・キャッチなどと呼びます。末尾に記載したリンクの動画をご覧ください。捕獲したら、すぐに捕虫網をひねって、逃さないようにしてください。公共の場で、他に観察・撮影している人がいたら、それが終ってから捕獲してください。

捕虫網の中のアサギマダラを網の外から押さえながら、中に手を入れて胸をつかみます。ハネや触角などを破損させないでください。ハネの腹側の白っぽいところに細書フェルトペンでマークを書きます。私は、写真撮影されやすく、一番目立つ後バネ両側に個人記号(Itaru KAnazawa→IKA)と個体番号(100頭以内でおさまれば01~)を書きます。これさえわかれば、どの個体かは後で記載する記録を調べればわかります。そして前バネの片方に地名記号(OSAka→OSA)と日付(10月13日→10.13)を書きます。

記号を3文字にしているのは、他の多くの愛好者と重複しにくく、区別しやすいからです。今でもカタカナなどを使っている愛好者がいますが、チュウゴクやロシアなど外国で再捕獲されたときのことを考慮して、マークは英数字のみにしましょう。

間違って書いたり、読みにくい文字になったら、両側の白っぽい部分を使って正しく書きなおしてください。毎年判読不能なマークがいくつか見つかります。読めなくては、マークをつける意味はありません。マークを書いたら安心してすぐに放蝶しないでください。放蝶する前にきちんと用紙に記載しましょう

準備の回で説明したPDFをダウンロードして、プリンタでA4用紙に印刷した記録用紙に、次のように記載します。

これは2021年10月10日に和歌山県日高川町と有田川町の境界付近にある白馬(しらま)山麓で標識した記録の一部です。きたない字ですみません(笑)。10月になっても暑く、なかなか平地に降りてこないと思ったら、標高600m以上の山地にあるヨシノアザミに訪花していました。当初は日高川町だと思っていたので、(HiDakaGawa→)HDGと付けていましたが、翌日からは(AriDaGawa→)ADGと付けるようにしました。白馬山なので、SRMという記号も考えられますが、あまり細かく分けない方が、わかりやすいでしょう。空白は記入忘れではなく、「上と同じ」という意味です。急いで書いているので、自分なりのルールで記入しています。初心者は記入忘れと区別するために、全部に何か書く方がいいでしょうね。

オスとメスの区別は、第1回の解説をご覧ください。気温の下の数字が湿度(%)です。鮮度については、羽化したてに見えるものはN、全体に色あせて見えるものはO、どちらとも判断がつきにくいものはMに○をしてください。初心者は必要ありませんが、前翅長は胸部の白点(用紙の裏面に写真があります)から前バネの先端までの直線距離です。測定する場合には、きちんと測りましょう。自由研究などでは、前翅長をグラフにするとおもしろいでしょう。鳥などの攻撃跡(ビークマークと呼びます)などで破損があるときは有に○をつけます。備考欄には訪花植物名や、メスであれば未交尾(交尾痕がありません)か否かなどを記入します。アサギマダラ以外のカバマダラなどに標識したら、ここに「カバマダラ」と記入してください。

記載したら、手の上にのせて、「元気に旅をしてね」と声をかけてあげて、放蝶してください。全個体は必要ありませんが、記念すべきその日の1頭目は、写真を撮影しておくといいでしょう。人によっては、マークを付けた全個体を撮影されている猛者もおられます。私は無理ですが(笑)。

次は緯度経度とスマホアプリを解説する予定です。

アサギマダラのタオル・キャッチの動画・・・﨑山孝也さんのFaceBookの動画です。FBにログインすると見れるはずです。

位置情報とスマホ・アプリ -初心者のためのマーキング講座(5)

マークのついたアサギマダラを見つけたら -初心者のためのマーキング講座(2)

マークを付ける準備 -初心者のためのマーキング講座(3)

マークを付ける準備 ー初心者のためのマーキング講座(3)

3回目の今回からは、いよいよマーキングの方法についての解説です。マーキング調査は、標識再捕(獲)法とも呼ばれていて、本来は全個体数推定のための調査方法です。移動性の強いアサギマダラでは、個体数を推定しにくいこともあって、むしろ移動を証明したり、移動の様子を理解するために行われています。

具体的な解説の前にまず注意事項を説明します。

昆虫であるアサギマダラは、鳥獣保護管理法という法律で守られている野鳥などと異なり、誰でも捕獲してマーキングを行うことができます。しかし、マーキングを行ったら、記録してきちんと報告しましょう。捕獲が禁止されている特別保護地区や私有地などでのマーキング、その行為が禁止されている自宅研修期間中のものなど、実名で報告できないマーキングは止めてください。現実に過去にそれらの行為がありました。そのマーク個体を発見して喜ぶ子供たちなどが、後のち標識者がわからずにがっかりしますし、全てのデータの信頼性が極端に低下していきます。報告の方法は最後に説明します。

その他の注意点としては、捕虫網に多数のアサギマダラを入れて、日なたに長時間放置しないことです。捕虫網の中でバタバタとはばたき、ハネが破損しますし、強い日射しに長く当たることで、あっという間に全部死んでしまいます。1頭捕獲してマークを付けて放蝶後に、次の捕獲をするのがベストです。アサギマダラは別な個体がいると、安心して飛来します。フジバカマ類に訪花している数頭のアサギマダラを全て捕獲してしまうと、他から飛来しなくなります。

また、アサギマダラを捕獲すると、背中あたりに黄色の水滴を出すことがあります。そして少し匂いがします。アサギマダラなどのマダラチョウ類は、体内に特殊な毒成分を含み、鳥などの捕食者から身を守っています。蝶・蛾類は多数の種からなるグループですが、その中で見た目がはでな蝶の仲間は、どれも多少の毒を含むと考えられます。蝶の中でもアサギマダラは、特に毒成分をうまく利用して身を守っており、そのせいか優雅に飛翔します。アサギマダラの体全体に毒成分があるので、素手でさわった指で自分の目をこすることは止めてください。マーキング作業を終えたら、必ず手洗いをお願いします。

必要なものは、捕虫網(愛好者は釣り用玉網とナイロンネットを使うが、初心者はスーパーなどで入手できるものでよい)、油性フェルトペン(黒色細書で、コンビニなどで入手できる)、記録用紙(マーキング解説付きの汎用記録用紙PDFが末尾のURLからダウンロードできる)、記録用ペン(黒色ボールペンJETSTREAMがおすすめ)、そしてスマホです。他に私は定規(前翅長を測定するなら。10センチで透明なものが使いやすい)、気温計(湿度も測定できるもの)、高度計(腕時計内蔵)、白色タオル(片方を結んでおく)を持参しますが、なくてもかまわないでしょう。夏休みの自由研究のテーマとしてマーキングをするのであれば、なんとか準備してください。

次回は具体的な作業を解説する予定です。

マーキング解説付きの汎用記録用紙PDF

マークを付けよう! -初心者のためのマーキング講座(4)

マークのついたアサギマダラを見つけたら -初心者のためのマーキング講座(2)

初心者のためのマーキング講座の2回目は、アサギマダラのハネにマークがあったらどうするか、という解説です。

アサギマダラ自体は、10月の西日本の平地でよく見られますので、稀少種という扱いではありません。私たち愛好者は、どこでアサギマダラが見られたか、に関心がありますが、その目撃記録を全て収集しているわけではありません。しかし、ハネにマークがついたアサギマダラについては、情報を集めています。

マークのついたアサギマダラを見つけたら、ぜひ捕獲して写真を撮影してください。捕獲は捕虫網がないと困難と思います。発見してすぐに捕獲しないと、たいていは南西方向への移動の途中に腹ごしらえしているところなので、飛び去ってしまう可能性があります。撮影は専用の接写拡大用のマクロレンズ付きカメラでなくても、最近のスマホのカメラは高性能なので、うまく撮影できるでしょう。左右のハネにマークが書いてあることも多いので、左手でつぶさないように胸を押さえて、両側を撮影してください。きれいに撮影できたら、放してあげてもいいです。

しばらく保管するためには、三角紙に入れると、おとなしくなります。三角紙がなければ、チラシなどの四角の紙を斜めに折って余分なところをさらに折ると、三角紙になります。その中に入れてあげます。虫かごに入れると、バタバタしてハネが痛んで、かわいそうな姿になります。弱いハネの先端をつかまずに胸をつかむようにしましょう。やさしく扱ってください。

餌をあたえる方法は、皿の上にティッシュを丸めて、黒砂糖、ハチミツ、スポーツ飲料などの水溶液をうすめて浸します。そこに脚をつけてやります。うまく口吻を伸ばして吸わなければ、楊枝などで口吻を伸ばして、ティッシュにくっつけてやります。それでしばらく吸汁すると思います。十分吸うと、室内を飛んで、明るい窓の方に飛んでいきます。

このブログのトップページにもある上の写真のアサギマダラに付けられたマークは、「OSA 10/13 IKA 229」です。大阪(OSA)で10月13日に金澤至(イニシャル3文字IKA)がその年の229番目にマークした個体という意味です。このように、地名記号、日付、個人記号、個体番号の4要素をハネに書くことになっています。この頃は10月13日を「10/13」と書いていましたが、最近では「10.13」と書いています。「/」が「1」に間違われやすいからです。

以上をふまえて、写真撮影されたマークを読んでください。うまく読めれば、その記号と性別、捕獲した地点、捕獲者、日付を教えていただければ、とてもありがたいです。連絡先は、各地の自然系博物館の昆虫担当か、大阪市立自然史博物館(TEL06-6697-6221)、あるいはアサギマダラの会です。うまく判読できない場合には、このサイトに書いてあるメールアドレスに写真を添付して送っていただいてもいいです。よろしくお願いいたします。

ただし、同所再捕獲というものも多いのです。フジバカマ類がたくさんあるところで、マーキング愛好者がマークをつけたアサギマダラが、その同じ場所で別な方に撮影されることがあります。当日撮影されたり、数日後に撮影されることもあります。同じ場所に数日間滞在したという事実を示す同所再捕獲で、価値のある再捕獲なのです。しかし、この同所再捕獲が多すぎて、どうしても別な場所で再捕獲される異所再捕獲に比べると軽い扱いになってしまいます。異所再捕獲だけでも毎年1000例以上が記録されますので、現実には同所再捕獲は再捕獲として扱うことができない状態になっています。

旅をするチョウ アサギマダラに会いに行こう! ーポイント案内1ー

アサギマダラを見つけたら -初心者のためのマーキング講座(1)

アサギマダラは、北米のオオカバマダラのように、1000キロ以上も旅をする謎の蝶です。その生活は40年以上にわたるマーキング調査によって、少しずつ明らかになってきました。その謎の蝶がこの日本に生息することに、私たち愛好者は感謝しながら調査を実施しています。アサギマダラは国境を越えて人と人を結びつける稀有な蝶です。あなたもこの調査に参加してみませんか。

アサギマダラの会の昨年の総会で、アサギマダラのマーキング初心者向けの解説がほしい、という意見がありました。そこで、「初心者のためのマーキング講座」シリーズとして連載を開始したいと思います。今月中に連載を終了し、今後アップデートしていく予定です。その最初の回であるこの小文は、アサギマダラを見つけたらどうしたらよいか、という解説です。

このブログのトップページにも使っているこの写真は、コバノフジバカマ(絶滅が心配されている秋の七草のフジバカマではありません)に訪花しているアサギマダラのオスですが、マークがつけられています。大阪市内で10月に撮影された写真です。

西日本の平地では、9月末から10月末までの約1か月間にフジバカマ類に訪花するアサギマダラがよく見られます。植物園や、神社、庭に植栽されたフジバカマ類や、山地に自生するヒヨドリバナの花蜜には特殊なピロリジジン・アルカロイド(PA)が含まれ、アサギマダラのオスが主に誘引されます。

下の写真のように、メスは後バネの末端近くの黒い性斑がなく、フジバカマ類にはあまり誘引されません。林内にいて、食草に産卵しながら、コシアブラなどの別な花で吸蜜します。この写真は、日本でこのアサギマダラに標識された西川尚実さんによると、中国のカメラマンで侯鈞毛さん(”毛”の部分が日本のフォントにはなく表示できません。正確には毛でも手でもなく、”毛”のしの部分がまっすぐの漢字らしいです)が台湾の蘭嶼島で撮影されたもので、長野県から移動してシロノセンダングサ類に訪花したメスです。長距離を移動したアサギマダラですから、全体に色あせており、ハネのあちこちが破損しています。苦難の長旅の過酷さがしのばれます。

アサギマダラを見つけたら、よく観察してください。ハネに文字が書いてあれば、それがマークで、その文字を判読すると、どこから飛来したかがわかります。最近では1年間に約10万頭のアサギマダラにマークが付けられています。皆さんが見つけるアサギマダラにもマークが付いている可能性は高いのです。

知ってる? アサギマダラ! ー旅をするチョウー

マークのついたアサギマダラを見つけたら -初心者のためのマーキング講座(2)

アサギマダラ年鑑のユーザ登録

アサギマダラ年鑑は、アサギマダラのマーキングデータ(標識記録と再捕獲記録の両方)を書き込むことができるサイトです。以前は日本鱗翅学会アサギマダラプロジェクトにより運営されていましたが、現在はアサギマダラの会により運営されています。データの書き込み方法などを簡単に説明します。

アサギマダラ年鑑のサイトは、ウィキペディアと同様なwikiというシステムです。登録されているユーザ名でログインすると、左上に「編集」が現れ、クリックすると編集画面になります。ログインしなくてもデータを閲覧できます。

マーキングデータは、そのデータを最も知っている標識者や再捕獲者が書き込むのがベストと思います。それが無理であれば、報告者が書き込むことになります。それで、なるべく多くのマーキング愛好者に登録していただきたいと考えていました。しかし、ユーザ登録希望者の中には、アサギマダラに無関係と思われる方もいました。その確認に手間取りました。最近では、「アサギマダラなどの移動昆虫のメーリングリスト(ML)asagi」の参加者に書き込んでもらうことにしています。アサギマダラのマーキング調査に関心がある方は、このMLに参加されているはずだと思われるからです。

アサギマダラ年鑑にユーザ登録をして書き込みたい方は、まず「アサギマダラなどの移動昆虫のメーリングリストasagi」に登録をお願いいたします。そして、いろいろな情報に接して、データの重要性に気づかれてから、書き込みを行ってください。特に修正と消去に注意してください。これ以上の情報は、MLで流します。お急ぎの方は、p.niphonica@gmail.comまでご連絡ください。

MLへの登録方法は、アサギマダラ・マーカーの広場の左中央をご覧ください。

ウスバキトンボの全国調査が始まったようですよ!

赤とんぼとよく勘違いされる「ウスバキトンボ」。実はアサギマダラみたいに長距離を移動しているそうです。

熊本県の益田勝行さんから先日、ウスバキトンボの全国調査が始まったと連絡をいただきました。

益田さんによると「ウスバキトンボは熊本辺りではお盆の頃に、街中の公園等でも沢山見られ、一番市民に身近なトンボかもしれません」とのこと。

マーキングをやってみました」と、画像も提供してくださいました。

マークは8月21日の「F2」。

「ウスバキトンボ全国マーキング調査」のホームページもあります。

https://sites.google.com/view/usubaki/

NHKの「ダーウィンが来た!」で8月28日、2分間の放送があったようです。ご覧になった方も多いでしょうね。

https://www.nhk.jp/p/darwin/ts/8M52YNKXZ4/blog/bl/p9oerqkz41/bp/pMjVEPW75M/

全国マーキング調査のホームページによると、9月8日朝現在、6600頭あまりのウスバキトンボにマーキングがなされ、24頭の再捕獲が報告されています。0.36%の確率なので、再捕獲は近距離かも知れませんね。

益田さんの言われる「一番市民に身近なトンボ」。そう思って、よく通う長野県松本市の東山にある標高1400mから1800m程度の美ヶ原の林道沿いでアサギマダラ調査のついでに探してみました。でもアキアカネは楽に発見できるのに、ウスバキトンボを見つけることはできませんでした。

ところが先日、松本盆地の西側の朝日村の標高900mほどの所に行った折に、空中を舞うアキアカネよりもちょっと大きめのオレンジ色っぽいウスバキトンボを発見しました。最近山ではアキアカネばかり見ていたので「大きい!」と感じました。

ウスバキトンボを探すのって、視線を下向きではなく、ちょっと上向きにしないと見えてこないですね。遠くの山や空の雲に目が行くのに、どうやら私は、目の前を舞う小さな昆虫たちを無視していたようです。

そこで近年撮影したトンボの画像を探してみました。残念ながらウスバキトンボの画像は私の撮影データフォルダの中では見つけることができませんでした。それもそのはず、ほとんど目線を横か下に向けていたのですから。

「ウスバキトンボはあまり止まらない」と後で知るのですが、どうやらそれほど休むこともなく舞い続けているようですね。静止画像は「ウスバキトンボ全国マーキング調査」のホームページにあります。体を水平にして止まる訳ではないようです。上のリンクからご覧になってください。

私は長野県なので、フィールドではいろんな生き物たちに出会います。当然トンボも出会うと時々カメラのレンズを向けてきました。しかし飛翔個体の撮影は非常に難しくて、あんなに大きなオニヤンマでさえも苦労しています。何度も何度も目の前を往復してくれるのにです。

まして空中を舞い続けるウスバキトンボにはレンズを向けることもなく、撮影していたのは木の枝などに止まっている赤とんぼだけだったのです。しょぼんとなりますね。

そんな訳で生体などの詳細は当然私にはわかりません。でもアサギマダラのように、どこかで再捕獲されたら、分からないことがどんどん分かっていくのでしょうね。

今回はウスバキトンボも移動性昆虫のひとつとして非常に興味深いなと思いましたので、ご紹介させていただきました。

益田さん、情報提供を有難うございました。

ほんのり色づいてきたフジバカマ:長野県宮田村

猛暑の夏に、秋の兆し見え始めたようです。長野県宮田村にあるアサギマダラの里のフジバカマが色づいてきたと、笹木真由美さんが画像を送ってくださいました。「まだつぼみですが、全体的に見るとほんのり淡いピンク色の景色がきれいです」。

笹木さんによると、宮田村付近では「コオロギが鳴いています。お盆を過ぎると朝晩は涼しくて気持ち良いです」とのこと。信州の秋の入り口らしい雰囲気になってきましたね。

花だけではなく、一番下の画像の空にも注目してください。この空に浮かぶのは筋雲でしょうか。上空に冷たい風が流れている証拠でしょうね。

宮田村では「第7回 全国アサギマダラサミット&フェス in 宮田」を9月17日(土)・18日(日)に計画しています。

その頃になるときっとアサギマダラの里のフジバカマが満開になって、たくさんのアサギアマラを引き寄せるでしょうね。楽しみですね。

笹木さん、情報と画像を有難うございました。

挿し芽のスイゼンジナに根が出てきました:長野県北アルプス山麓

またまたスイゼンジナの話で恐縮です。

茎をカットしてペットボトルに入れておけば根が出るとお聞きしていましたので、早速挑戦してみました。長野県とは言え毎日30度超えが続く夏のちょっと涼しい室内です。季節的に良いのか悪いのかも分かりませんが、何と言っても挑戦ですから季節は問いませんよね。

7月23日に例の株から一本の茎をカットし、下の葉っぱを数枚取り除き、写真のように水だけ入れたペットボトルに挿しておきました。葉っぱも捨ててはもったいないので、小さな瓶に入れて様子を見ていました。

8月1日。何か白いものが茎から出ているような・・・でも根とは思えないし・・・そんな訳で写真も撮らなかったのですが、2日によくよく見ると白い根が伸びているのを確認できました。

それぞれを拡大してみますね。

茎から数ミリの根が出ているのが見えるでしょう。やっぱ、根だったんですね。何もしないで放っておいて10日目です。

 

もう一方の葉っぱの下の葉柄からも根が出ています。この方が分かりやすいですね。

まさか葉っぱからも根が出るとは思わなかったのですが・・・ひとつの葉っぱからこんなにもたくさんの白い根が出ていました。

 

翌日の3日(11日目)の画像から、根の成長の速さをご覧ください。たった一日でこんなに伸びるんです。しかも夜の間に伸びていたんです。

 

葉柄の方はこちらです。

別の葉っぱからも短いですが根が出ていますね。たった一晩で数ミリの根が伸びました。ちょっと感動的ですよね。

 

根を出させるためには光を遮断しないといけないのかなとか、水を毎日替えないといけないのかなとか、実は色々考えたんです。でもアサギマダラの調査で山に通うことで忙しくて、そう立派な言い訳をして、放って置いたらこんな感じになっていたという訳です。

知識もない、世話もしないこんな私でも、とりあえずここまではできました。

気を良くしてさらに2本の茎をカットして、2つのペットボトルに入れてみました。さて、どうなるかしらね?

 

小学生の時にこんな宿題が夏休みにあったら、きっと楽しくっていっぱいいろんな植物を挿し芽したんだろうなと思いました。よろしければお子さんとご一緒にやってみられませんか?