奄美群島の島唄の「蝶」はアサギマダラではないか?

先日、NHKの「ファミリーヒストリー 岩崎宏美 〜母から継いだ声 父を変えた歌〜」(初回放送日12月9日(火)午後10:00)を見ていたところ、奄美群島の島唄によく出てくる「蝶」は、アサギマダラだろうという確信を持ったので紹介します。私の知る限り、この指摘はこれまでになく、初めてのものと思われます。

番組の5分頃から、唄者(うたしゃ)の説明が始まります。岩崎宏美さんの母方の大祖母が畠 伝松(はたけ でんまつ)氏で、奄美大島の地元では有名な唄者だったそうです。唄者は住民が集まる場で島唄を披露するのですが、唄がうまく、なおかつ記憶力がいい方がつとめたのでしょう。

6分50秒頃から、徳之島節という島唄の歌詞の意味が画面に表示されました。次のようです。

徳之島に向かって 飛びをる綾蝶々 一時待て蝶々 伝言を頼もう 致し方ないよないよ 伝松姉っこ

この最後の「伝松姉っこ」が岩崎宏美さんの大祖母の畠 伝松氏であり、徳之島へ向かって飛ぶ蝶に、愛しい人への伝言を頼む愛の唄であると、識者の解説がありました。少し違和感がある解説なのですが、本題でないので、詳細は控えます。

私が引っかかったところは、「徳之島に向かって 飛びをる綾蝶々」です。「綾蝶々」は、奄美群島の島唄によく出てくる歌詞のようです。「島唄の綾蝶々とは?」とGeminiに訊いたところ、次の回答(一部)がありました。「沖縄の方言(ウチナーグチ)です。綾(あや): 模様、美しい模様。蝶々(はべる): 蝶、または蛾。沖縄では、日本最大級の蛾である「ヨナグニサン」のような美しい蛾も「ハベル」と呼びます。…これは美しい模様の蝶蛾(ガ)を指す言葉ですが、この歌においては魂を運ぶ存在としての意味合いが込められています。…魂の化身:沖縄には「人が亡くなると蝶になってあの世へ旅立つ」「蝶は先祖の魂を背負って帰ってくる」という伝承があります。つまり、アヤハベルは単なる昆虫ではなく、亡くなった人々の魂そのものを象徴しています。」つまり、「あやはべる」と発音して、「美しい蝶」という意味と思われます。

徳之島、奄美大島、喜界島の位置(Googleマップより)

以上のGeminiの回答から「徳之島に向かって飛ぶ美しい蝶」は、「奄美大島から徳之島へ向かって(死者の)魂を運び、背負って帰ってくる美しい蝶」という意味にもとれるのです。それでアサギマダラです。徳之島、奄美大島(、喜界島)の位置関係は上の図のようです。アサギマダラは、秋の11月頃に喜界島、奄美大島から南西方向へ多数の個体が南西方向へ飛びます。そして、春の3~4月に徳之島から奄美大島・喜界島へと北東方向へ北上すると思われます。秋に徳之島へ向かって飛び、春にまた帰ってくるわけです。それにアサギマダラは最も目立つ優雅に飛ぶ蝶なので、資格は十分でしょう。

喜界島には福島 誠氏が住んでおられ、多数の標識・再捕獲をされています。本州から喜界島へ移動したアサギマダラの再捕獲がほとんどです。次に多いのが本州から奄美大島で、徳之島へ移動した個体の記録も数頭あります。奄美大島と徳之島には地元のアサギマダラ愛好家がほとんどおらず、両島間の移動は記録されていませんが、移動すると思われます。それが私の推定の根拠です。

ところで、岩崎宏美さんの父方の故郷は、新潟県佐渡島の相川町で、私と同じ新潟県でした。岩崎宏美さんのファンとして、とてもうれしい情報でした。

最近できたNHK ONEで再放送が見られます。配信期限は12月16日(火)午後10:44です。興味のある方はぜひご覧ください。