アサギマダラのマーキング調査の歴史と成果を解説した英語本の出版

1970年代に始まったアサギマダラのマーキング調査の歴史と、調査の成果、特に国間の移動(130例)を詳しく解説した英語の本が電子出版されました。

内容は、日本におけるアサギマダラという蝶のマーキング調査の歴史と国際的な移動に焦点を当てています。具体的には、調査の開始から初期の方法、国内外での再捕獲数の増加、そして台湾、韓国、香港への移動経路の解明について概説されています。また、DNA解析による遺伝的特徴の特定、インターネットを通じた情報共有の進展、そしてマーキング方法の変化も紹介されています。最終的には、調査の社会的な意義と将来への期待についても触れられています。

マーキング調査の歴史と成果を解説した英語本の表紙

本のタイトルなどの詳細は、次のようです。

Marking Survey on Chestnut Tiger Butterfly in Japan
– History and Inter-Country Migration –
Second Edition
Published April 28, 2025
KANAZAWA, Itaru / TAHARA, Fumiko / MIYATAKE, Yorio / TAGUCHI, Makoto
The Chestnut Tiger Group English Translation Team: CTGETT

The explanatory video by NotebookLM is as follows.

To view this book, visit Kindle.

日本語に翻訳すると、次のようです。

日本におけるアサギマダラのマーキング調査
- 歴史と国間移動-
第2版
2025年4月28日発行
金澤 至・田原富美子・宮武賴夫・田口 誠 編著
アサギマダラの会・英文化チーム

NotebookLMによる解説動画は次のようです。

閲覧方法は、キンドルにアクセスしてください。多くの方がたに読んでいただくために、最も安価な約2ドルに設定しています。よろしくお願いいたします。(著者一同)

【アサギマダラの産卵を7月に確認・でも不思議がいっぱい】

アサギマダラの生態を観察する機会は春や秋の花畑や山でのマーキング以外にはそうそうあるものではありませんが、皆さんはどの程度アサギマダラの不思議に近づいてきたでしょうか?

春の海岸のスナビキソウで北上のアサギマダラを観察することができるようですが、秋にはアサギマダラの南下に伴ってフジバカマの花畑でアサギマダラをたくさん見る方も多いかも知れませんね。

メーリングリストやFacebookの書き込みで、アサギマダラの交尾を撮影したとか、オスのヘアペンシルを撮影したなどの情報が入ってくると、ちょっワクワクするものですね。滅多に見る機会がないからですよね。

長野県に住んでいても去年はなかなか山に行けなかった私ですが、今年になって7月31日にある方の別のチョウの調査に同伴して朝日村の林道鉢盛山線で、ゲートから鉢盛山登山口までの区間、車を走らせ、たまたま標高1465m付近でアサギマダラを観察する機会がありました。

イケマの周辺にいたアサギマダラを見つけ、思わずカメラを握り締めました。アサギマダラはイケマの葉裏に止まりましたので、葉の表から撮影。葉とアサギマダラが見えるように回り込みたかったのですが、動いてしまい、とりあえずピンボケでもいいからとシャッターを切りました。

2025.7.31-506 アサギマダラ イケマに産卵中11:15

これは直感ですが、イケマにアサギマダラがいたと言うことは、メスの産卵だと判断し、とっさにアサギマダラがいた葉に近づいて葉を裏返すと、やはり白い卵が。

2025.7.31-548アサギマダラの産みたての卵11:17

その同じ株の上の方の新芽には2つの卵も確認できました。同じ個体の卵なのでしょうね。3卵を確認できました。

2025.7.31-554小さなイケマの新芽にアサギマダラの卵を2卵確認11:17

アサギマダラはすぐ近くのクマザサの葉に止まり、さらに別の葉に移り、そこでじっとしています。産卵を終えて疲れ切ってしまったのでしょうか?

卵があったイケマの近くから動くこともなく、私が何度もカメラのシャッターを切ってもそのままです。うるさいシャッター音がするのに、逃げる様子もなく、疲れて眠りについたかのようです。

いつもでしたら捕まえてマーキングするのですが、そのアサギマダラを見た私はとてもマーキングする気になれず、そっと観察を続けました。

2025.7.31-612クマザサで休み続けるアサギマダラ11:15-11:24

メスのその個体の翅はボロボロで、浅葱色の部分にはシミも見えます。

翅の状態から考えれば、春に暖かいところで羽化したアサギマダラなんでしょうね。マークは確認できませんでしたが、どこから来たんでしょうね?メーリングリストで報告を出してくださる南の方の皆さんの顔が思い浮かびます。

産卵を終えたばかりのアサギマダラです。マークしようと思えば捕虫ネットもマーキング表もフェルトペンも持参していますし、素手で捕まえることも簡単にできました。でもアサギマダラの気持ちになれば、休ませてあげたいと思ったのは、女心からかも知れません。

でも、なぜアサギマダラは遠くに舞って行かなかったのでしょうか?人間が近くにいても平然と卵の近くに留まっているんです。これも女心なのでしょうか?いえ、親心があってのことだったりすれば、アサギマダラに感情があるってことですよね。そんなことってあるんでしょうか?

マーキングよりも観察を選び、10分弱その場所に私たちも留まりました。しかし目的があって林道に行っているので、いつまでもそのままでいられなく、私たちの方が先にその場所から移動することにしました。

葉っぱの表から撮影とはいえ、私がアサギマダラの産卵を確認したのは恐らく初めてのことです。

山のイケマの葉裏で卵は時々発見していましたが、産卵するアサギマダラは見たことがなかったように思います。

ヒメギフチョウやモンキチョウ、アゲハの産卵は何度も見ていますが、産卵は蝶の不思議な行動の一つですね。

どうやって幼虫の食草の葉を見分けるのでしょうか?株が小さくても見分けています。

産卵に葉の裏を選ぶのはなぜなのでしょうか?直射日光が当たらないからなのでしょうか?卵が雨に濡れないためでしょうか?

下を向いているに卵が葉っぱから落ちないのはなぜなのでしょうか?

小さな新芽に卵が二つもありましたが、食草が足りるのでしょうか?

人間でもお産には相当の体力を使いますが、チョウの場合はどうなんでしょうか?動かなくなるほどじってしていることを考えれば、やはり相当の体力を使っての産卵なのでしょうか?

7月末の産卵ですので、卵が成長して成虫になって、アルプスを越えて南に移動するのに、気温が下がりすぎる前の時期に成長が間に合うのでしょうか?

そんなメスのアサギマダラが2000km以上も移動した例もあることを考えると不思議がいっぱいでたまりません。

そんな素朴な疑問がいっぱいあるので調査をやめられないでいる私です。

ポツンと一軒家でアサギマダラが登場しました

2025年6月1日20時からテレビ朝日系列で放送された「ポツンと一軒家 瀬戸内海に…海運王の別荘!?・・・」という番組で、アサギマダラが割と詳しく紹介され、乱舞しているシーンや標本なども登場しました。

視聴率のいい番組ですから、ご覧になった方も多いと思います。私はほとんど見ないのですが、先週の予告を見た近所の方から、「来週6月1日放送予定のポツンと一軒家にアサギマダラが出るで」と聞きました。それで、録画予約をしていました。当日、番組を見た知人から電話で連絡もありました。

先ほど見てみると、かなり詳しく紹介されていました。番組開始後18分くらいからアサギマダラが登場し始めます。海運王といわれた方の別荘が香川県の瀬戸内海の小さな島にあったそうです。そこが会社の保養所になって、数年前から70歳代のご夫婦が住んでおられます。その奥様がチョウを好きで、特にアサギマダラがお好きなようです。アサギマダラを誘引するために、そこに住んでおられるという説明もありました。

4月のサクラの開花真っ盛りの取材で、別荘前の海岸のスナビキソウがアサギマダラの好きな花としてまず紹介されました。スナビキソウの密度はそれほど高くはありませんが、そこそこあるようです。香川県観音寺の有明浜や、淡路島にスナビキソウがあったと思いますから、瀬戸内海の離島にあっても不思議ではありません。

お宅の中にアサギマダラの標本と写真があり、「けしご山 しば」とマークがありました。それは岡市東区広谷芥子山で柴久恵さんが標識されたものと思われます。それもご存知のようでしたが、たぶんメーリングリストに報告のないものかもしれません。これから精査したいと考えています。

旦那さんが撮影された、コバノフジバカマと思われる花にたくさんのアサギマダラが乱舞するシーンも映りました。大分県の姫島が有名ですが、島に誘引植物を植えると、集まりやすいようです。海上を移動するアサギマダラが臭いにひかれて降りてくるのでしょう。

Tverで見逃し配信を1週間ほどは見れると思います。ぜひ、ご覧ください。

終了:ZOOMによる「アサギマダラの会のまとめの会(総会)」にご参加ください。申し込みは、まだ間に合います。

総会は終了いたしました。

アサギマダラの会のまとめの会(総会)に出席してくださった皆さま、長時間、大変お疲れ様でした。アメリカやカナダの皆さまも出席されておりましたね。徐々にアサギマダラが国際的になっているのを感じました。

各地の皆さんによる研究発表は、とっても興味深かったですね。それぞれの地でいろんな取り組みがなされていたり、成虫や幼虫の長期に亘る観察や調査は、根気がいる研究だと感じました。

出席された皆さまや、都合によって出席できなかった皆さまのご意見もお寄せください。

またZOOMでお会いしましょう。

======= ★ =======

3月30日(日)までに参加希望メールを送って下さい。

      jym-0644[@]zeus.eonet.ne.jp 

      アットマークの[カッコ]を外して下さい。

      会員の皆さんでご参加できない方は、委任状をお願いします。

NHKみんなのうたに「スナビキソウ」の歌があったんですね!

アサギマダラの吸蜜植物のスナビキソウを調べていましたら、遥海(HARUMI)さんが歌っている「スナビキソウ」が目に留まりました。YouTube にあるようなので、早速、聴いてみました。

音楽の世界に疎い私ですが、歌詞と歌声が素敵でした。

「・・・逃げずに枯れずに生き抜く・・・」と言う歌詞からも、落ち込んでいる人をきっと勇気づける歌なのでしょうね。たくさんのコメントが入っていました。

「塩辛い涙の上にしか咲かない花」 にたとえられているスナビキソウ。海岸で咲く姿を思い浮かべることができました。そんなスナビキソウの花を実際に見てみたいです。

NHKのみんなのうたに、こんなに素敵な歌があったとは。しんみりと聴き入ってしまいました。

もうすぐアサギマダラの北上が始まります。

海岸に行ってスナビキソウに来ているアサギマダラを見つけましたら、ぜひご報告くださいね。初見情報になるかも知れません。

実名で、場所(県名、海岸名など)、座標(スマホで分かると思います)、天気、発見日、マークがあれば標識、アサギマダラは何をしていたのかなどをお知らせください。

マークの写真があれば写真を添えてください。再確認情報になる場合もあります。南の島のマークが書かれているかも知れませんよ。

よろしくお願いします。

終了:アサギマダラの会の「2024年度のまとめ&2025年度の計画立案会(通称「まとめの会」)」ご案内

総会は終了いたしました。

参加さしてくださった皆さま、大変ありがとうございました。またZOOMでお会いしましょう。

====== ★ =====

2024年度のまとめ&2025年度の計画立案会(通称「まとめの会」が、以下のように開かれます。

開催日程:2024年4月6日(日)13:00~17:00頃

開催方法:Zoomを用いたON-LINEでの開催

参加対象者:アサギマダラの会会員およびアサギマダラ調査に関心をもつ方  (非会員可)

参加方法:    事前に参加申し込みをメールにて発信

事務局より視聴URLを受信

開催当日に視聴URLに繋ぐ

開催内容: 研究発表 参加者自己紹介と近況報告 総会

参加の申し込みは、視聴を希望するPC(あるいはスマホ)から、以下のアドレス宛メールにて、本文に必ず「お名前」を記入の上送付してください。また件名は【まとめの会参加希望】としてください。3月30日(日)までにお願いします。

会員の方で、総会に参加されない方は議決に対する【委任状】を事務局宛にお送り下さい。

【まとめの会参加希望】および【委任状】の送り先は以下の通りです。

JYM-0644@zeus.eonet.ne.jp

(迷惑メール防止のために、一部大文字表記ですが、@も含めてすべて小文字に変換してください)

(アサギマダラの会事務局)

以上です。

【友人から届いたスナビキソウの地下茎から新芽】

三重県の友人から先日、山口県の友人からいただいて増やしたと言うスナビキソウの地下茎を送っていただきました。

濡れた水苔を入れたビニールの袋に、細い地下茎が入っており、地下茎から1,5cm程度に伸びている白い新芽が見えました。こんなにか細い地下茎で、新芽も本当に小さいものだったと、初めて知りました。

地下茎から伸びたスナビキソウ新芽

海岸でスナビキソウを見ている方は何人もいらっしゃると思います。スナビキソウがアサギマダラの春の吸蜜植物になっているので、海岸でアサギマダラのマーキングをされる方や撮影を楽しんでおられる方も多いかもしれませんね。

三重県の友人は、路地栽培とビニールの温室栽培のスナビキソウの両方を送ってくださいました。芽が出ているのはビニールの温室で育てたものです。 三重県は暖かいので、もう路地に移植しても大丈夫のようです。

一方、スナビキソウが届いた翌日に、長野県北アルプス山麓では雪が降りました。15cmほど降り、雪かきをしました。ですので冬の間に水耕栽培をして、ゆっくりと芽を出してもらい、温かい春になったら山沿いの畑に植えようかと思っています。

長野県の山沿いで育つかどうかは実験してみないと分かりませんが、北海道の海岸にもあるようですので、長野県でも育てることは可能だろうと思っています。

北上のアサギマダラが長野県にやって来るのは5月連休開けです。その頃に花を咲かせるのはどうも難しそうですが、こんなところで花を見ることができるかも知れないと思うと、ちょっと嬉しいですね。

実はほぼ毎年、お隣の新潟県や富山県にドライブがてら行くことがあり、行くたびに海岸でスナビキソウを探していました。でも残念ながら見つけることはできませんでした。柏崎に行ったときに、小高い丘の上でスナビキソウに似た白い花が咲いていましたが、残念ながら葉っぱからして、スナビキソウではなかったです。

ところが、一昨年石川県に行った時に、能登半島の西側のある海岸に点々と生えていた植物を撮影していました。すでに花が散っていて名前も分かりませんでした。実はその植物がスナビキソウだったと言うことが、今年になって画像を整理していて分かったのです。

その海岸でアサギマダラをマーキングしていた大先輩がいることを、過去のメーリングリストで知ることもできました。アサギマダラが石川県のその海岸に吸蜜に来ていたのですね。そこでは北上の個体の再捕獲まであり、素晴らしい海岸だったということを知ることができました。

さて、海岸の砂浜に育つスナビキソウですが、北アルプス山麓での水耕栽培が成功するかどうか、とにかく頑張ってみますね。

【アサギマダラが移動した2点間の距離の比較】

アサギマダラにマーキングされる皆さんは、きっとどこかで自分が付けたマークのアサギマダラが再捕獲されるのだろうと、期待を込めてマーキングされるのではないでしょうか?メーリングリスト(ML)に参加したり、Facebookなどに書き込み、期待を込めてご自身のマークを探すと思います。そして再捕獲があると、どこをどのように移動したのだろうかと、距離も知りたくなりますし、ルートも知りたくなりますね。

 

そこで、ここ数年間ずっと気になっていた標高を含めた測地線長の比例計算と、球面余弦定理の計算を、Google Earth がはじき出してくれた数値を100として、割合で比較してみました。それが下のグラフです。

私が実際に再捕獲したアサギマダラの6例のデータと、私のマークが各地で再捕獲された47例のデータだけを使用して比較しました。

 

その中には、比較的近い場所での再捕獲が何例もあったために、実質的には45のデータの比較ということになりました。

 

使用した私のデータの標識地はすべて長野県内ですが、長野県内での再捕獲には標識地が山形県、福島県を含みます。再捕獲地は長野県内の他に、愛知県、石川県、京都府、兵庫県、山口県、鹿児島県、沖縄県などに及び、最短距離は小谷村平間から大町市平の22.6km、再長距離は大町市平から沖縄県宮古島市伊良部島の1,776kmの区間です。

 

棒グラフは3つのデータの比較になっていますが、実際の検証はGoogle Erarth を含めて6つのデータの比較です。一つは国土地理院計算サイトのデータ、さらに、そのデータを元に標高とジオイド高を考慮した比例計算によるデータ、もう一つは球面余弦定理による計算です。

 

比例計算と球面余弦定理の計算は、地球の半径を6,370kmと6.371kmの2種類を考慮していますので、合計6例のデータの比較となりました。

 

赤い棒は比例計算によるものです。国土地理院のデータに、地球の半径を6,370kmと6.371kmの2種類を考慮して出した数値ですが、小数点以下13位まで計算してやっと違いが出る程度の差でしたので、比例計算の棒は一つだけを表示させています。

 

緑と青の棒は球面余弦定理です。地球の半径を6,370kmにして計算したのが緑の棒で、地球の半径を6.371kmで計算したのが青の棒です。

 

距離は分かりやすいように大雑把に表記し、23kmから1700kmの間で14の距離だけを表示させています。Google Earth を基準にしていますので、100%の位置にある長い横の紫の線が基準線と理解してください。

 

100%よりも多い数値も少ない数値もありますが、多くて100.01759%、少なくて99.907229%でした。

 

距離だけで見た場合、松本市美ヶ原林道から山口県下関市間の、Google Earth の計測684.15km に対して、球面余弦定理の計算で682.75404km となり、その差は1.3959613km でした。しかし、その割合の差は、99.985212%ですので、大差ない数字と言えます。

 

標高とジオイド高を考慮した比例計算では、ほぼGoogle Earth と一致していると言えます。距離が短い小谷村平間―大町市平間の22.63km(グラフ表示は23km)では、割合で99.907229%、松本市美ヶ原林道―箕輪町東箕輪の35kmでは、割合で99.944849%となり、グラフでは差があるように見えますが、これも大差ない範囲だと思いました。

 

今年の4月頃には今まで使っていたジオイド高が見直されて新しくなるとのことですので、あくまでも目安です。そして、国土地理院のジオイド高は国内だけしか表示されませんので、台湾など、海外で再捕獲されたものの計算には適していません。

 

当然、計算で出した2点間の距離は、直線の最短距離ですので、アサギマダラが実際に直線で移動した訳ではないことは多くの皆さんが知っていることですね。ですので、計測の2点間の距離は、あくまでも目安です。

 

マークを付けて送り出したアサギマダラがどこかで再捕獲された時に、いったいどのくらいの距離を移動したんだろう、翅が傷ついていなかっただろうか、どんな旅をしたんだろう・・・などと、気になるに違いありません。

 

個人的に疑問に思ったことをこのように検証してみたのですが、地上のどの辺りをどのように移動しているのか、アサギマダラ自身が一番よく知っていますね。「こんな計算なんかしなくていいので、わたしたちの生態をもっとしっかり観察してよ。そしてどこに行っても吸蜜植物や食草があるような環境を整えてくれたら嬉しいな」と、アサギマダラたちが言っているような気がしてなりません。

 

皆さんも引き続き、様々な方法で、アサギママダラの色々なことを比較検証してみてください。楽しいですよ。

「君はどこへ飛んでいくの?」香港のマダラチョウ研究会のFacebookの投稿 2025年1月

 

日本と香港の架け橋となってくださっている Emily さんからの情報です。

香港のマダラチョウ研究会(Danaid Butterfly Research Hong Kong)は、日本から香港に移動したアサギマダラの英語と中国語の素敵なページの紹介を始めました。

https://www.facebook.com/danaidhk

香港のマダラチョウ研究会は、日本から3000km以上移動した個体を再捕獲して記録した後に、タグを貼って放しました。

「君はどこに飛んで行くの?」と言う期待を込めてです。そのタグを確認することもできます。

Facebook に登録されておられる方は、ご覧になれると思います。

ぜひご覧ください。

 

【アサギマダラ香港へ3000km以上の旅】2024年12月

今年の暮れも迫った12月21日、びっくりするようなニュースが台湾のアサギマダラの関係者から飛び込んできました。なんと「香港でアサギマダラを再発見した!」と言うものです。

香港の友人経由で情報をくださったのは台湾の李さんです。情報には「デコ 8/18 MSM 128」のマークが書かれていました。

デコと言うのは、福島県裏磐梯にあるスキー場で、そこでマーキングする何人もが使っているマークです。マークに書かれた「MSM」に驚いたのは私です。知り合いのマークですが、知り合いはフェルトペンによるマーキングではなく、紙のシールを貼っているからです。そのようなアサギマダラが香港で再捕獲されたから驚きでした。「まさか・・・本当に?!」と、ただただびっくりし、ちょっと目を疑ってしまうほどでした。

画像の公開は控えますが、その後、李さんと香港のEmilyさんから情報が入りました。そしてアサギマダラメーリングリスト(ML)の仲間たちと情報の共有が始まりました。その時には詳細はまだでしたが、シールにマークを書いている清水さんと、清水さんと一緒に活動している滝澤さんに、すぐに電話連絡をしました。年配の清水さんは驚きのあまり、その時には言葉になりませんでした。

李さんやEmilyさんを通して、再捕獲したのは香港大学香港ダナイド蝶研究会のメンバー LING博士だと分かりました。私たちは大学の関係者とも連絡を取り合いました。移動情報は、清水さんと一緒に活動している瀧澤さんが、清水さんの代理で出してくださいました。

オスの「デコ 8/18 MSM 128」が、2024年8月18日に福島県耶麻郡北塩原村 桧原荒砂沢山 グランデコスキー場から出発し、2024年12月21日に香港 淺水灣で再捕獲されました。3,016.7kmを西南西方向に124日かけて移動しました。と言う内容です。

ところで、清水さんと瀧澤さんの二人が協力して活動しているのには訳はあります。清水さんの手の指が変形性関節症だということに加え、乱視も重なり、思うように文字が書けないからです。マーキング当初はフェルトペンを利用していたものの、「自分で書いていながら字が分からなくなった」と清水さんは話してくださいました。その後清水さんは、アメリカのオオカバマダラのタグ付け調査のことを知り、マークを印刷した紙のシールを貼ることに切り替えました。

清水さんは毎回、標識地に行く前に紙にマークを印刷し、持参します。1から200番のマークを日毎に用意して、そのシールをアサギマダラの翅に貼って放します。さらに腕には腕章もします。調査していることを周辺に来る皆さんに誤解がないように知っていただくためです。瀧澤さんはそのような清水さんをサポートしており、まさに二人三脚での移動調査を継続しています。

清水さんによれば、過去10年ほどの間に沖縄県でも2例再捕獲されているとのことです。意外と遠くまで移動して再捕獲されたものだと、改めて感心しました。今回は距離は3000kmを超え、移動日数は4ヶ月以上ですから。

香港の LING さんは、アサギマダラを再捕獲して記録したのち、タグ「 (danaidhk): 2104」をつけて放しました。さらに再捕獲の可能性があります。

清水さんは「台湾を通り越して香港だからたまげた。当然体調もあるし、瀧澤君にお世話になるが、楽しみにやっていきたい。ご理解いただけるとありがたい」と、話しています。

引用は、[asagimadara:03833と03836]です。